日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG61_2AM2] 岩石・鉱物・資源

2014年5月2日(金) 11:00 〜 12:45 311 (3F)

コンビーナ:*角替 敏昭(筑波大学生命環境系)、藤永 公一郎(東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻)、三宅 亮(京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻地質学鉱物学教室)、土谷 信高(岩手大学教育学部地学教室)、座長:藤永 公一郎(東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻)、三宅 亮(京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻地質学鉱物学教室)

11:15 〜 11:30

[SCG61-09] 北海道産黒曜石の加熱実験によるパーライトの形成温度と岩石組織

池谷内 諒1、*和田 恵治1斉藤 丈朗1 (1.北海道教育大学旭川校)

キーワード:黒曜石, 加熱実験, パーライト, 発泡, ガラス

黒曜石の多くは流紋岩質でほとんどガラスからなる。黒曜石には急冷によって生成したガラスの中にH2Oが比較的多く残っているため,黒曜石を高温で熱するとH2Oが気体となって気泡をつくり,黒曜石全体がパンのように膨らむ現象がおこる。ガラス質で緻密であった黒曜石が軽石に似た形態に「変身」する。このような発泡した黒曜石は「パーライト」と呼ばれる。今回,北海道産黒曜石(7地域13ヵ所)を電気炉中で加熱して発泡させる実験を行い,黒曜石の発泡開始温度を新たに計測した。また黒曜石の水分量をカールフィッシャー電量滴定法により測定した。得られた発泡開始温度と黒曜石の水分量を比較したところ,水分量が多い黒曜石は発泡開始温度が低く,水分量が少ない黒曜石は発泡開始温度が高くなる結果が得られ,発泡開始温度は黒曜石の水分量によってほぼ決定されることが明らかとなった。白滝産・十勝石沢黒曜石についてパーライトの岩石組織を調べた。このパーライトの発泡形態は発泡時の加熱温度によって異なることが観察された。発泡開始温度とほぼ同等の1030℃で発泡させたパーライトは,個々の気泡サイズが大きいのに対し,それよりも高温である1100℃で発泡させたパーライトは気泡サイズが小さく数密度が大きい。さらに温度を上げて1200℃で発泡させたものは気泡サイズが小さいことに加え,逆に発泡倍率(パーライトの体積/黒曜石の体積)が小さくなった。1030℃発泡と1100℃発泡ではどちらもほとんど隙間なく気泡が密に存在するが,1200℃発泡では気泡と気泡の間にパーライトの固体部分が多く存在して隙間をつくっており,気泡部分が占める体積の割合が小さいために発泡倍率が小さくなる。低温発泡の場合はガラスの粘度がまだ大きいために,発生した気泡はすぐには脱ガスせず,ゆっくりと時間をかけて気泡が成長・移動して気泡同士が接触するため連結が起こって次第に気泡が大きく成長していくと考えられる。高温発泡の場合は,ガラスの粘度が小さいので,発生した気泡は比較的すばやく移動することができる。そのため,先に発生した気泡はすでに脱ガスしたため,気泡が密集することはなく,連結も起こらない。したがって,気泡のサイズは小さいままとなる。以上のように,ガラスの粘度の大きさが気泡の移動速度に影響し,気泡の連結の頻度が異なることによって,発泡形態に違いが生じると考えられる。