日本地球惑星科学連合2014年大会

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ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG61_2PO1] 岩石・鉱物・資源

2014年5月2日(金) 16:15 〜 17:30 3階ポスター会場 (3F)

コンビーナ:*角替 敏昭(筑波大学生命環境系)、藤永 公一郎(東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻)、三宅 亮(京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻地質学鉱物学教室)、土谷 信高(岩手大学教育学部地学教室)

16:15 〜 17:30

[SCG61-P02] 北部九州,深江花崗岩北波多岩体の希土類元素組成

*川野 良信1 (1.立正大学地球環境科学部環境システム学科)

キーワード:九州, 深江花崗岩, 北波多, 希土類元素組成

九州北部には白亜紀に活動した花崗岩類が広く分布しており(唐木田,1985),佐賀県唐津市北波多にもその一部である深江花崗岩が分布している.北波多に分布する深江花崗岩(以下,北波多岩体と呼ぶ)には部分的にアプライト様の岩相や珪長質包有物が認められる.珪長質包有物は直径50cmほどのプール状の楕円形を示し,周囲の花崗岩と漸移関係を示している.北波多岩体の主要構成鉱物は石英,カリ長石,斜長石,黒雲母で,副成分鉱物として燐灰石,ジルコン,不透明鉱物を伴う(川野, 2013).北波多岩体の黒雲母K-Ar年代は95.8+/-2.4 Maを示す(北波多村村史編纂委員会,2008).北部九州に分布する花崗岩類の年代は90 Maから100 Maに集中することが知られており(唐木田ほか,1992),本岩体の黒雲母K-Ar年代はその範囲内に入る.
 川野(2013)は,全岩化学分析の検討から,北波多岩体中に見られる珪長質包有物が岩体を形成したマグマの残液が濃集したものと推定した.今回,北波多岩体7試料,珪長質包有物1試料,アプライト2試料の計10試料について希土類元素組成を求め,川野(2013)の推定結果との比較を行った.
 コンドライトで規格化した希土類元素のパターンでは,軽希土の値は北波多岩体が最も高く,次いでアプライト,珪長質包有物の順に低くなる.また,規格化したLa/Lu比は北波多岩体で最も高く,珪長質包有物,アプライトの順に低くなる.さらに,北波多岩体と珪長質包有物にはEuの負異常は認められないものの,アプライトには明瞭にそれが認められる.すなわち,Eu/Eu*比はアプライトが最も低く,北波多岩体と珪長質包有物は同程度の値を示す.
 北波多岩体,珪長質包有物,アプライトの順にSiO2量は増加し,アプライトは花崗岩に比べ分化が進んでいると考えられる.通常,同一マグマからの分化した場合,分化が進むにつれ軽希土の値は大きくなる.しかしながら,SiO2に富むアプライトや珪長質包有物の軽希土の値はSiO2の乏しい北波多岩体よりも低く,同一マグマからの分化では説明が困難である.また,分化が進行すればLa/Lu比も大きくなると考えられるが,同比が最も大きいのは北波多岩体であり,アプライトが最も小さい.このこともこれらの岩石が同一マグマ起源ではないことを示している.Euの負異常や低Eu/Eu*比から,アプライトは斜長石の分別を行ったと推定されるが,軽希土の濃度やLa/Lu比の特徴から,北波多岩体を形成したマグマからアプライトが導き出されたとは考えられず,異なるマグマからの分化物と考えられる.北波多岩体のアルミナ飽和度は1.0よりも大きいが,珪長質包有物のそれは0.9以下でメタアルミナスの性質を示す.このことから,マグマに取り込まれた堆積岩が融解したとは考えられず,異なる起源を持つ珪長質マグマを取り込んだのかもしれない.