16:15 〜 17:30
[SCG61-P06] マダガスカル共和国中央東部アンタナナリボ岩体アンバートフツ地域に産するザクロ石-珪線石片麻岩の温度圧力経路
キーワード:ゴンドワナ超大陸, マダガスカル中央東部, アンタナナリボ岩体, ザクロ石-珪線石片麻岩, 時計回りの変成経路
マダガスカル共和国は東-西ゴンドワナ大陸の衝突縫合帯である東アフリカ-南極造山帯の中央部に位置していると考えられている (e.g. Jacobs and Thomas, 2004).そのため造山帯の形成プロセスを理解する上で重要な地域の一つである.本研究ではマダガスカル共和国中央東部アンタナナリボ岩体東部アンバートフツ地域に産するザクロ石-珪線石片麻岩中のザクロ石から藍晶石+十字石+白雲母+ルチルの鉱物組み合わせを初めて見いだしたのでその産状を報告するとともに,各種地質温度圧力計とシュードセクション法による結果から変成温度圧力経路を議論する.
アンタナナリボ岩体は主に珪長質変成岩から構成され,少量の変成堆積岩を含む (Tucker et al., 2012).ザクロ石-珪線石片麻岩は岩体東部に産しており,周囲には磁鉄鉱-斜方輝石-石英片麻岩(変成縞状鉄鉱),ザクロ石-斜方輝石岩,ザクロ石-角閃石-黒雲母片麻岩などが産する.ザクロ石-珪線石片麻岩は主にザクロ石,珪線石,カリ長石,斜長石,石英から構成され,少量の黒雲母,白雲母,モナズ石,ジルコン,ルチル,石墨を含む.珪線石はマトリクスおよびザクロ石の包有物として見られ、藍晶石はザクロ石の包有物としてのみ見られる.またザクロ石 (XMg = 0.17-0.18) 中にはスピネルが包有されており,また石英の包有物を大量に含み,モナズ石が濃集しているのが特徴である.このスピネルはMgに乏しく (XMg = 0.21-0.22),Znに富む (ZnO = 18.4-19.0 wt.%).さらにザクロ石中から藍晶石+十字石+白雲母+ルチルの包有物が今回初めて見つかった.この十字石はMgに乏しく (XMg = 0.12),Znに富む (ZnO = 3.1 wt.%).ザクロ石の一部は黒雲母 (XMg = 0.58)と珪線石に置き換わっており,放射状の集合体として見られる.
これらの岩石記載の結果,ザクロ石-珪線石片麻岩の変成条件は十字石+石英の安定領域から,温度上昇によりザクロ石+藍晶石の安定領域へ進んだものと考えられる (Spear and Cheney, 1989).さらにピーク時にはザクロ石+珪線石+スピネル+石英が安定な鉱物組み合わせであったと考えられる.そこでザクロ石-珪線石-斜長石-石英地質圧力計 (Spear, 1993) ,ザクロ石-珪線石-スピネル-石英地質温度圧力計 (Nichols et al., 1992) とザクロ石の活動度 (Berman, 1990) を用いて変成温度圧力条件を見積もると,温度約800℃,圧力0.9GPaが見積もられる.ザクロ石の周囲にしばしば放射状の黒雲母と珪線石が見られる.これはザクロ石を置き換えてこれらの鉱物が生成する加水反応 (Le Breton and Thompson, 1988) であり,ザクロ石+カリ長石+水から低温で安定な黒雲母+珪線石+石英の鉱物組み合わせに変化したものと考えられる. この後退変成作用の温度圧力条件はザクロ石-角閃石-黒雲母片麻岩の見積もりとほぼ一致する。この岩石についてザクロ石-角閃石地質温度計 (Graham and Powell, 1984)、角閃石-斜長石地質温度計 (Holland and Blundy, 1994)、ザクロ石-角閃石-斜長石-石英地質圧力計 (Kohn and Spear, 1990) を用いた結果,温度約700℃,圧力0.6GPaの変成条件が見積もられる。
以上のことから,アンタナナリボ岩体東部アンバートフツ地域に産するザクロ石-珪線石片麻岩は十字石+石英の安定な高圧条件から,昇温期変成作用を経て温度約800℃,圧力0.9 GPaのピーク変成条件を経て,後退変成作用を経て温度約700℃,圧力0.6 GPaまで温度低下と圧力減少を経る時計回りの変成経路を経たと考えられる.
アンタナナリボ岩体は主に珪長質変成岩から構成され,少量の変成堆積岩を含む (Tucker et al., 2012).ザクロ石-珪線石片麻岩は岩体東部に産しており,周囲には磁鉄鉱-斜方輝石-石英片麻岩(変成縞状鉄鉱),ザクロ石-斜方輝石岩,ザクロ石-角閃石-黒雲母片麻岩などが産する.ザクロ石-珪線石片麻岩は主にザクロ石,珪線石,カリ長石,斜長石,石英から構成され,少量の黒雲母,白雲母,モナズ石,ジルコン,ルチル,石墨を含む.珪線石はマトリクスおよびザクロ石の包有物として見られ、藍晶石はザクロ石の包有物としてのみ見られる.またザクロ石 (XMg = 0.17-0.18) 中にはスピネルが包有されており,また石英の包有物を大量に含み,モナズ石が濃集しているのが特徴である.このスピネルはMgに乏しく (XMg = 0.21-0.22),Znに富む (ZnO = 18.4-19.0 wt.%).さらにザクロ石中から藍晶石+十字石+白雲母+ルチルの包有物が今回初めて見つかった.この十字石はMgに乏しく (XMg = 0.12),Znに富む (ZnO = 3.1 wt.%).ザクロ石の一部は黒雲母 (XMg = 0.58)と珪線石に置き換わっており,放射状の集合体として見られる.
これらの岩石記載の結果,ザクロ石-珪線石片麻岩の変成条件は十字石+石英の安定領域から,温度上昇によりザクロ石+藍晶石の安定領域へ進んだものと考えられる (Spear and Cheney, 1989).さらにピーク時にはザクロ石+珪線石+スピネル+石英が安定な鉱物組み合わせであったと考えられる.そこでザクロ石-珪線石-斜長石-石英地質圧力計 (Spear, 1993) ,ザクロ石-珪線石-スピネル-石英地質温度圧力計 (Nichols et al., 1992) とザクロ石の活動度 (Berman, 1990) を用いて変成温度圧力条件を見積もると,温度約800℃,圧力0.9GPaが見積もられる.ザクロ石の周囲にしばしば放射状の黒雲母と珪線石が見られる.これはザクロ石を置き換えてこれらの鉱物が生成する加水反応 (Le Breton and Thompson, 1988) であり,ザクロ石+カリ長石+水から低温で安定な黒雲母+珪線石+石英の鉱物組み合わせに変化したものと考えられる. この後退変成作用の温度圧力条件はザクロ石-角閃石-黒雲母片麻岩の見積もりとほぼ一致する。この岩石についてザクロ石-角閃石地質温度計 (Graham and Powell, 1984)、角閃石-斜長石地質温度計 (Holland and Blundy, 1994)、ザクロ石-角閃石-斜長石-石英地質圧力計 (Kohn and Spear, 1990) を用いた結果,温度約700℃,圧力0.6GPaの変成条件が見積もられる。
以上のことから,アンタナナリボ岩体東部アンバートフツ地域に産するザクロ石-珪線石片麻岩は十字石+石英の安定な高圧条件から,昇温期変成作用を経て温度約800℃,圧力0.9 GPaのピーク変成条件を経て,後退変成作用を経て温度約700℃,圧力0.6 GPaまで温度低下と圧力減少を経る時計回りの変成経路を経たと考えられる.