日本地球惑星科学連合2014年大会

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ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG61_2PO1] 岩石・鉱物・資源

2014年5月2日(金) 16:15 〜 17:30 3階ポスター会場 (3F)

コンビーナ:*角替 敏昭(筑波大学生命環境系)、藤永 公一郎(東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻)、三宅 亮(京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻地質学鉱物学教室)、土谷 信高(岩手大学教育学部地学教室)

16:15 〜 17:30

[SCG61-P08] 南インドのゴンドワナ大陸衝突帯に見られる新太古代と新原生代中期のバイモーダル火成作用

*小林 愛理1角替 敏昭1小泉 達也1 (1.筑波大・地球)

玄武岩質岩とデイサイト質岩からなる大規模なバイモーダル火成作用は、島弧またはリフト帯に特徴的なイベントと考えられている。したがってこれら火成岩の岩石学的・地球化学的研究は、その地域のテクトニクスを議論する上で重要であるといえる。本研究では、南インドの大陸衝突型造山帯にみられる2つの異なる時代のバイモーダル火成作用を報告し、その成因について考察する。

南インドは北部の太古代(33-25億年)の花崗岩-グリーンストーン帯(ダルワークラトン)およびグラニュライト岩体(セーラム岩体、マドラス岩体、クーグ岩体など)と、南部の原生代(5.3-5.7億年)のグラニュライト岩体(マドゥライ岩体、トリバンドラム岩体など)の2つの地塊で主に構成される。これら地塊の境界部はパルガット-カウベリー剪断帯と呼ばれるが、これは原生代末期〜カンブリア紀初期(約5.5億年前)のゴンドワナ大陸集合最末期に起こったモザンビーク海の閉塞および両地塊の衝突によって形成された剪断帯である。本研究ではパルガット-カウベリー剪断帯の北部に位置する太古代地塊のうち、新太古代(25億年)の火成・変成年代を示すマドラス岩体と、33-32億年の火成・変成年代を示すクーグ岩体に貫入した新原生代中期(クライオジェニアン)の火成岩体みられるバイモーダルな火成作用のメカニズムを明らかにすることを目的とした。

 タミルナドゥ州のナマッカル-セーラム間に露出するマドラス岩体の塊状チャノッカイト(斜方輝石を含む花崗岩質岩)には、不規則な形状をした数十cm程度の黒色の玄武岩質岩のブロックが局所的に分布している。これら2つの異なる岩相の境界は明瞭で、これは典型的なマグマ混和組織と考えられる。主要な岩相である花崗岩質岩は、石英、斜長石、普通角閃石、斜方輝石からなる粗粒で完晶質の岩石である。一方で苦鉄質岩は変成作用を受けて苦鉄質グラニュライトとなっており、鉱物組み合わせは斜長石、単斜輝石、斜方輝石、黒雲母、石英からなるグラノブラスティックな岩石である。両者ともにサブアルカリックで、花崗岩質岩はデイサイト質、苦鉄質岩は玄武岩質安山岩質な組成をもつ。花崗岩質岩のNb-Y、Ta-Yb、Rb-(Y+Nb)、Rb-(Yb+Ta)および苦鉄質岩のLa-Y-Nb(La/10-Y/15-Nb/8)比から、両者はともに火山弧起源の火成岩である。しかし、鉱物化学組成や顕微鏡下の組織からは、マグマ混合の証拠は得られなかった。これは、原岩形成後の800℃を超えるグラニュライト相の変成作用により、もとの組織や鉱物組成が完全に再結晶化したためと考えられる。

 一方、ケララ州カサラゴド北部には、33-32億年のクーグ岩体に貫入した新原生代中期(クライオジェニアン)の花崗岩質岩中に、濃緑色で最大約20×40cmの大きさの多数の苦鉄質岩ブロックが産出する。マドラス岩体のものと類似した産状から、この岩石もマグマ混和組織と考えられる。花崗岩質岩は白色〜淡桃色で、主要な構成鉱物は石英、斜長石、カリ長石、黒雲母である。特に斜長石は自形を呈する。一方の苦鉄質岩は細粒であり、斜長石、普通角閃石、黒雲母、スフェーンからなる。緑簾石、緑泥石などの変質鉱物もみられる。マグマ起源の単斜輝石の残存結晶が角閃石や黒雲母に包有される組織から、この苦鉄質岩はマグマ混和後に角閃岩相の変成作用を被ったことがわかる。この花崗岩質岩は火山弧起源のカルクアルカリ岩型であり、苦鉄質岩は火山弧起源のアルカリ岩(basaltic trachy-andesite)である。両者の境界部にみられる斜長石斑晶からは、反復累帯構造や汚濁帯の存在が確認された。汚濁帯累帯構造は、微晶なメルト包有物が斜長石に含まれたもので、一般的にマグマ混合が生じた時に低温マグマから晶出した結晶が、液と反応して部分溶融して生じると考えられている(Tsuchiyama, 1985)。また斜長石斑晶の累帯構造にBa含有量に急激な変化が見られたため、これがマグマ混合プロセスを知る手がかりとなる可能性がある。