16:15 〜 17:30
[SCG61-P14] Heコリジョン型ICP-四重極質量分析計による岩石組成の定量分析法
キーワード:ICP-QMS, マイクロ波分解法, 火山岩, 定量分析, カメルーン
1.はじめに
ICP-四重極質量分析計(QMS)は、高感度かつ短時間で多元素分析を可能とするが、目的とする元素と同じ質量を有する多原子分子による干渉を受ける。例えばArを含む多原子イオン(ArO、ArClなど)は、FeやAsの分析を妨害する。多原子イオンを除去するために、コリジョンガスを使用するICP-QMSが開発された。コリジョンガスは、一般的にHeガスのような不活性ガスが用いられる。コリジョンガスを用いることにより、アルゴンガスによる生成物や再結合による生成物を壊し、これまで測定が困難であった元素の分析が可能となる。本研究では、標準岩石を用いてHeコリジョン型ICP-QMSで主成分及び微量成分組成の分析が可能か検討し、実際の試料としてカメルーン火山列の火山岩の分析をした。
2.ICP-QMS
分析には、ThermoScientific社のiCAP-Qを用いた。iCAP-Qは、1.6kW 27MHzのICP部で試料溶液をプラズマ化する。Arガスの消費量は16L/分と比較的少ない。サンプリングコーン部は片手で工具なしで装置外に引き出すことが可能で、洗浄にかかる手間は少ない。真空系に導入されたプラズマは90度の曲げ角を持つイオンレンズでHeコリジョンセルに導入される。イオンレンズで中性分子は効率よく排除される。Heコリジョンセルは小さなQMSを構成しており、目的元素よりも低質量のイオンの大部分が排除され、多原子イオンはHe原子との衝突でエネルギーを失い排除される。コリジョンセルを通過したイオンは主たるQMSで質量分別され、アナログ及びパルス器で感知される。
3.分析
サンプルは、産業技術総合研究所の標準岩石(JA-2、JB-2、JB-3)及びカメルーン・バロンビンボ火山における火山岩を使用した。先ず、粉末状の試料50mgをテフロン製分解容器に入れ、35wt%塩酸2mL、60wt%過塩素酸1mL、50wt%フッ化水素酸0.5mLを加えた。これをParkin Elmer社のMultiwave3000でマイクロ波加熱酸分解した。分解はまず、出力を50W/minで500Wまで上昇させ、60分間加熱した。その後、50℃以下になるまで冷却した。その後、飽和ホウ酸水2.5mL及び超純水2.5mLを加えて、280W/minで1400Wまで上昇させ、20分間加熱した。加熱終了後、50℃以下に冷却した。分解後の溶液は超純水で50mLに定容した。
4.結果と考察
標準岩石における主成分は、Siを除いてほぼ70%以上の収率が得られた。微量元素については、一部を除いて70%以上の収率が得られた。また、複数回同様の岩石を用いて測定を行なったところ、ぞれぞれの元素の収率に顕著な違いは見られなかった。したがって、いくつかの改善の必要はあるもののiCAP QcによりSiを除いて岩石の主成分及び微量成分化学組成を分析することが可能であると判断される。カメルーンで産する火山岩を分析した結果、Nb/Yに対するZr/TiO2の関係を用い、火山岩はアルカリ玄武岩に分類された。これは、カメルーン火山岩を研究したA. Marzoliら(2000)による結果と良く一致する。
ICP-四重極質量分析計(QMS)は、高感度かつ短時間で多元素分析を可能とするが、目的とする元素と同じ質量を有する多原子分子による干渉を受ける。例えばArを含む多原子イオン(ArO、ArClなど)は、FeやAsの分析を妨害する。多原子イオンを除去するために、コリジョンガスを使用するICP-QMSが開発された。コリジョンガスは、一般的にHeガスのような不活性ガスが用いられる。コリジョンガスを用いることにより、アルゴンガスによる生成物や再結合による生成物を壊し、これまで測定が困難であった元素の分析が可能となる。本研究では、標準岩石を用いてHeコリジョン型ICP-QMSで主成分及び微量成分組成の分析が可能か検討し、実際の試料としてカメルーン火山列の火山岩の分析をした。
2.ICP-QMS
分析には、ThermoScientific社のiCAP-Qを用いた。iCAP-Qは、1.6kW 27MHzのICP部で試料溶液をプラズマ化する。Arガスの消費量は16L/分と比較的少ない。サンプリングコーン部は片手で工具なしで装置外に引き出すことが可能で、洗浄にかかる手間は少ない。真空系に導入されたプラズマは90度の曲げ角を持つイオンレンズでHeコリジョンセルに導入される。イオンレンズで中性分子は効率よく排除される。Heコリジョンセルは小さなQMSを構成しており、目的元素よりも低質量のイオンの大部分が排除され、多原子イオンはHe原子との衝突でエネルギーを失い排除される。コリジョンセルを通過したイオンは主たるQMSで質量分別され、アナログ及びパルス器で感知される。
3.分析
サンプルは、産業技術総合研究所の標準岩石(JA-2、JB-2、JB-3)及びカメルーン・バロンビンボ火山における火山岩を使用した。先ず、粉末状の試料50mgをテフロン製分解容器に入れ、35wt%塩酸2mL、60wt%過塩素酸1mL、50wt%フッ化水素酸0.5mLを加えた。これをParkin Elmer社のMultiwave3000でマイクロ波加熱酸分解した。分解はまず、出力を50W/minで500Wまで上昇させ、60分間加熱した。その後、50℃以下になるまで冷却した。その後、飽和ホウ酸水2.5mL及び超純水2.5mLを加えて、280W/minで1400Wまで上昇させ、20分間加熱した。加熱終了後、50℃以下に冷却した。分解後の溶液は超純水で50mLに定容した。
4.結果と考察
標準岩石における主成分は、Siを除いてほぼ70%以上の収率が得られた。微量元素については、一部を除いて70%以上の収率が得られた。また、複数回同様の岩石を用いて測定を行なったところ、ぞれぞれの元素の収率に顕著な違いは見られなかった。したがって、いくつかの改善の必要はあるもののiCAP QcによりSiを除いて岩石の主成分及び微量成分化学組成を分析することが可能であると判断される。カメルーンで産する火山岩を分析した結果、Nb/Yに対するZr/TiO2の関係を用い、火山岩はアルカリ玄武岩に分類された。これは、カメルーン火山岩を研究したA. Marzoliら(2000)による結果と良く一致する。