日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG62_2AM1] 流体と沈み込み帯のダイナミクス

2014年5月2日(金) 09:00 〜 10:45 502 (5F)

コンビーナ:*岡本 敦(東北大学大学院環境科学研究科)、川本 竜彦(京都大学大学院理学研究科附属地球熱学研究施設)、片山 郁夫(広島大学大学院理学研究科地球惑星システム学専攻)、座長:岡本 敦(東北大学大学院環境科学研究科)、片山 郁夫(広島大学大学院理学研究科地球惑星システム学専攻)

09:15 〜 09:30

[SCG62-02] 岩石-水反応の数値モデリング~表層環境を中心として~

*横山 正1 (1.大阪大学理学研究科宇宙地球科学専攻)

キーワード:反応・輸送モデリング, 岩石-水反応

岩石-水反応は,岩石内部における溶解・沈殿等の反応と元素の拡散や水の移流との相互作用により進行する.岩石内部の反応・輸送過程は,以下の式で定量的に記述できる:φ(∂c/∂t)= De(∂2c/∂x2)-(∂c/∂x)+Ar0f(c)この式は一次元の反応・輸送方程式の一例であり,cは溶液中の元素濃度(mol/cm3),tは時間(s),xは距離(cm)(地表面からの深さなど),φは間隙率(無次元),Deは有効拡散係数(cm2/s),vは間隙水の流速(cm/s),Aは岩石の単位体積あたりの表面積(cm2/cm3),r0は鉱物の溶解速度定数(mol/cm2/s)である.f(c)は溶解速度の溶存元素濃度依存性を表す関数であり,石英など溶存Si濃度の増加に比例して溶解速度が下がる鉱物の場合は,f(c)=(1-c/ceq)となる(ceqは鉱物の平衡濃度(mol/cm3))(Schott et al., 2009).反応・輸送方程式を解くことにより,岩石内部の溶存元素濃度と溶解速度の分布や,一次鉱物と二次鉱物の分布がどのように時間変化するかなどの情報が得られる.そのような解析は反応・輸送モデリングと呼ばれ,土壌の生成(Maher et al., 2009)やCO2の地下貯留に伴う反応(Xu et al., 2010)など,様々な過程の研究に応用されている.反応・輸送方程式で用いる各パラメータの値は,フィールドでの実測,室内実験,モデリングにおけるフィッティング(計算結果と天然の産状の比較)などにより見積もられる.反応・輸送モデリングで天然の現象を正確に再現するためには,個々のパラメータの値をできるだけ正確に見積もることが基本になる.しかし,どのような値を設定すれば適切なモデリングになるかの判断は難しい.例えば,反応表面積Aについては,鉱物へのガスの吸着量から求めた値や,鉱物の外形を球などと近似して得られる表面積がよく用いられるが,それらの表面のどれだけの割合が実際に反応に寄与しているかは不明な場合が多い.また,一つの鉱物に対して様々なf(c)が提案されていたり,溶解速度の時間変化(White and Brantely, 2003)が生じたりするため,採用すべき反応速度則がよく分からない場合もある.したがって,適切なパラメータの設定の方法は,主要な研究課題の一つである.地球表層環境の岩石-水反応においては,岩石内部で水の浸透や乾燥が断続的に起こり,それに伴って間隙を水が満たす割合(水飽和率)が変化するため,その影響の評価は重要である.水飽和率が下がると,岩石内部の水の通りやすさ(透水係数)や有効拡散係数Deが低下し,モデリングの結果に大きく影響することが示されている(Yokoyama, 2013).また,水飽和率が反応表面積Aにどのような影響を及ぼすかも近年明らかになってきている(Nishiyama and Yokoyama, 2013).