日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG62_2AM1] 流体と沈み込み帯のダイナミクス

2014年5月2日(金) 09:00 〜 10:45 502 (5F)

コンビーナ:*岡本 敦(東北大学大学院環境科学研究科)、川本 竜彦(京都大学大学院理学研究科附属地球熱学研究施設)、片山 郁夫(広島大学大学院理学研究科地球惑星システム学専攻)、座長:岡本 敦(東北大学大学院環境科学研究科)、片山 郁夫(広島大学大学院理学研究科地球惑星システム学専攻)

10:00 〜 10:15

[SCG62-05] 東海地域におけるフィリピン海プレートの沈み込みに伴う温度場・脱水と想定東海地震・SSE・LFEとの関連性

*末永 伸明1吉岡 祥一2松本 拓己3 (1.神戸大・理、2.神戸大・都市安全セ/理、3.防災科研)

キーワード:2次元箱型熱対流モデル, 巨大地震, 低周波地震, スロースリップ, 温度, 脱水

東海地域では、海溝型巨大地震の発生が懸念されており(e.g., Ishibashi, 1980)、浜名湖周辺では2000年から約5年にわたって長期的スロースリップイベント(SSE)が発生した(e.g., Miyazaki et al., 2006)。また、東海地方では深部低周波地震(LFE)の震源の深さが東へ行くほど深くなる傾向がみられる。本研究では、東海地域において、フィリピン海プレートの沈み込みに伴う温度場の数値シミュレーションを行い、海洋地殻中の中央海嶺玄武岩(MORB)の相図を用いてフィリピン海プレート上面からの脱水過程を見積もった。得られた温度場及び脱水過程の計算結果から、東海地震の想定震源域、浜名湖周辺で発生した長期的SSE及び東海地域におけるLFEの発生原因との関連についてそれぞれ考察した。計算モデルは2次元箱型熱対流モデル(Yoshioka et al., 2013)を使用し、駿河トラフを始点として東海地方を通る3本の平行な測線を設定し、それぞれの測線に沿った鉛直断面内の温度場を計算した。末永他(2013日本地震学会)からの主な変更点は、プレート境界面での摩擦熱を計算する際のパラメターである間隙水圧比について、一様な値から深さによって異なる値を与える改良を行った。その結果、計算結果の温度場の妥当性の指標となる地殻熱流量の観測値と計算値のフィッティングが改善され、その結果に基づき、プレート境界面の温度、プレート上面からの脱水過程について見直しを行った。プレート間カップリングがみられる上端・下端の深さは温度によって支配されると考えられており(Hyndman and Wang, 1993)、プレート境界面の温度150〜350 ℃の領域を東海地震の想定震源域とすると、その深さの範囲は9〜21 kmのプレート境界面となり、その領域は東へ行くにつれて狭くなった。また、浜名湖周辺のSSE発生領域では、プレート境界面温度が350〜450 ℃となり、不安定すべりから安定すべりへの遷移領域に相当した。また、SSE発生領域付近ではblueschistからgreenshistへの相転移に伴う脱水反応が生じ、プレート境界面に水が存在することが推定される。東海地域でのLFEの震源分布域でのプレート境界面の温度は500〜630 ℃とばらつきがみられたが、脱水過程をみると、greenschistからepidote amphiboliteまたはblueschistからgreenschistへの相転移による脱水反応が震源分布域周辺でみられた。そこで本研究では、LFEの発生原因として、プレート境界面での水の存在が第一要因であるとし、震源の深さに差がみられるのは、異なる脱水過程を経るためにプレート境界面において水が存在する深さが東へ行くほど深くなっているためであると結論づけた。