日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG62_2AM2] 流体と沈み込み帯のダイナミクス

2014年5月2日(金) 11:00 〜 12:45 502 (5F)

コンビーナ:*岡本 敦(東北大学大学院環境科学研究科)、川本 竜彦(京都大学大学院理学研究科附属地球熱学研究施設)、片山 郁夫(広島大学大学院理学研究科地球惑星システム学専攻)、座長:川本 竜彦(京都大学大学院理学研究科附属地球熱学研究施設)、岡本 敦(東北大学大学院環境科学研究科)

12:30 〜 12:45

[SCG62-P04_PG] 沈み込む堆積岩層中の含水相topaz-OHの高温高圧下における状態方程式の決定

ポスター講演3分口頭発表枠

*新里 美月1井上 徹2蔡 閙2末次 秀規2柿澤 翔2 (1.愛媛大学理学部地球科学科、2.愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター)

キーワード:topaz-OH, 高圧含水相, 沈み込むスラブ, 状態方程式, 放射光X線その場観察

沈み込むスラブ中の含水鉱物の脱水分解反応によってH2Oに富んだ流体が生成され、その流体はマグマの生成や溶融温度の低下、マグマ組成の変化を引き起こすと考えられている。topaz-OH [Al2SiO4(OH)2]は沈み込むスラブの堆積岩層中に存在すると考えられる含水鉱物であり、天然のtopaz [Al2SiO4(OH,F)2]の端成分である。安定領域についてはtopaz-OHは5-10 GPa、1500℃まで安定に存在すると報告されている(Wunder et al,. 1993; Ono. 1998; Schmidt et al,. 1998)。状態方程式の研究は天然のtopaz (Komatsu et al,. 2003; Gatta et al,. 2003)では行われているがtopaz-OHにおいては未だに報告されておらず、また高温及び高圧下での実験も行われていない。従って、本研究ではtopaz-OHの状態方程式すなわち熱弾性的性質を明らかにするために高温高圧下でのX線その場観察実験を行った。
出発物質のtopaz-OHはマルチアンビル型高圧発生装置を用いた急冷回収実験によって10 GPa、~1000℃の条件下で合成した。X線その場観察実験は高エネルギー加速器研究機構、PF-AR NE5Cの高圧発生装置MAX80を使用し、エネルギー分散法によりX線回折パターンの収集を3-10 GPa,800℃までの範囲で行った。熱弾性物性値はAngel(2000)によるEosFit v5.2の計算ソフトを用いて計算し、フィッティングには3次のバーチマーナハンの状態方程式を用いた。
高温高圧条件下で得られた全データを3次のバーチマーナハン状態方程式によってフィッティングしたところ(K'=4で固定)、V0=354.7(1)Å3、K0=169.8(22)GPa、(dKT/dT)P=-0.013(7) GPaK-1、a0=1.61(23)×10-5K-1、b0=1.36(41)×10-8K-2という値が得られた。一方、今回得られた圧縮データを詳しく解析すると、7 GPa付近で圧縮特性の変化が示唆された。この現象はa軸とb軸の圧縮特性の変化として現れている。従って、7 GPa付近を境界に低圧側、高圧側で状態方程式の計算を試みた(K'=4でfix)。結果、低圧側でV0=355.2(1)Å3、K0=160.1(2)GPa、高圧側でV0=356.5(9)Å3、K0=153.1(89) GPaと異なる値をとる結果が得られた。天然のtopazを用いた先行研究との比較を行うと本研究によって得られたtopaz-OHの体積、体積弾性率はともに先行研究より大きい値となった。これはOHの含有量の増加に伴う体積弾性率の増加が原因であると考えられる。体積弾性率に対する密度の比較を行うと、topaz-OHはバーチの法則に従う直線近くに位置し、高圧含水相であるPh D [Mg2SiO4(OH)2]と並んで体積弾性率が大きく、密度が大きい鉱物であることが明らかとなった。そのため、topaz-OHは堆積岩層中の安定な領域ではスラブの沈み込みを促進させ、より深部へ水を運搬することができると考えられる。