日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG63_2PM1] 断層帯の化学

2014年5月2日(金) 14:15 〜 15:55 418 (4F)

コンビーナ:*角森 史昭(東京大学大学院理学系研究科地殻化学実験施設)、田中 秀実(東京大学大学院理学系研究科)、村上 雅紀(応用地質株式会社)、座長:角森 史昭(東京大学大学院理学系研究科地殻化学実験施設)、田中 秀実(東京大学大学院理学系研究科)

14:50 〜 15:05

[SCG63-03] 有馬型流体の起源流体組成とフラックス推定

*田中 秀実1照沢 秀司1菅井 秀翔1角森 史昭2村上 雅紀3川端 訓代2 (1.東京大学大学院理学系研究科、2.東京大学大学院理学系研究科地殻化学実験施設、3.応用地質(株))

キーワード:地殻流体, 有馬型温泉, フラックス, 塩水, 同位体組成

地下水の化学組成の変動は、地震を含む地殻変動の指標として古くから認知され、かつ世界の各地で現在も計測が続けられている。しかしながら、その目的に対する組成測定の位置、着目する組成等の必然性、すなわち地殻変動観測に対する化学測定の背景動機の必然性については、必ずしも明確ではなかったと考えられる。地震に関して言えば流体の前兆現象の存在がクローズアップされがちであるが、研究初期の段階が遥か昔となり、その後、地震流体分野自体が衰退してしまったことを考えれば、この戦略は現代では十分有効ではないと考えられる。本分野が再興するかどうかは、流体前兆現象の的中/非的中を越えて、流体物理化学量の変動から断層等を含めた地殻の挙動を診断する診断学を確立させることができるか否かが鍵となるだろう。地殻変動を対象とした地殻流体の診断学を確立できるかどうかを調べるために必要な課題は、大きく分けて三つある (田中ほか 2012)。一つは、(1) 地殻変動を観察するために採取すべき流体の必然性、(2) 流体を観測、分析するための装置の必要な性能の想定と実装実現、最後には、(3) 測定された結果事例の解釈 = 診断認知力の向上である。 以上のよう理念に基づき、その中の小さな一つを取り上げて検討した結果を報告する。今回は、有馬温泉の湧泉を例として考える。有馬温泉は、複数の湧出源泉が存在し、掘削が行なわれた 1940 ~ 1950 年代以後、神戸市の管理のもと、一定の湯量と泉質を維持している日本でも数少ない温泉である。これまで多くの研究者の興味を引き、表層地質、地下構造、湧出源、湧出経路を始めとした種々の研究が行なわれ明らかにされてきた。表層および地下構造の物理探査の結果から、温泉水が断層を流路として上昇していることが明らかにされている。このような流体を我々は「断層流体」と呼び新たな流体分類カテゴリーとした。地殻変動の監視に特化した場合、断層流体かそうでないかは観測対象を明確化する際の重要な要素だからである。また、有馬温泉の起源については独特の同位体組成から、深部流体の混入が確実視されている。本発表は、(1) なぜ、その位置で観察しなければならないのか? についての基礎的な課題と考えられる断層流体のフラックス定量を議論し、過去の解析結果と比較検討する。