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[SCG63-06] 東北地方太平洋沖地震前に観測された地下水ラドン濃度の先行現象について
キーワード:ラドン, 地下水
本講演では、2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震の前に観測された、地下水ラドン濃度の先行的な濃度変化と後に観測された緩和的な濃度変化について報告する。 地下水中のラドン濃度は、地震の前後で異常変化をする場合があることが知られている。その現象の研究は、始まった当初は地震発生予測に利用できるのではないかという楽観的な見方をされてきたが、近年では様々な理由からほとんど行われていない。それでも、毎年多くの事例が報告されているので、地下水ラドン濃度の変動の機構を正しく理解する研究は重要である。本講演では、中伊豆に配置した連続観測点で実測された地下水ラドン濃度が、東日本東北沖地震の前後でどのような変動を示したかを報告し、それを理解するためのモデルについて議論したい。 中伊豆観測点のラドン濃度は、2010年11月ごろからラドン濃度の上昇が大きくなり、地震発生とともにラドン濃度のジャンプも観測された。その後、1年をかけて指数関数的にラドン濃度が減少し、現在では通常値に戻った。地震発生前にラドン濃度変化が起きるタイミングは1978年の場合と同じであるが、今回は上昇するという変化であったことが前回と異なる。地震発生後の変化は、1978年の時はすぐに通常値に戻ったが、今回は1年をかけて指数関数的に減少して通常値に戻ったことも特徴である。これまでに確からしい地震前兆現象は報告されていないので、これらの地震前後のラドン濃度変化が前兆現象であると確定できない。しかしもし、これらの変化が装置由来のゴーストであったならば、地震発生と同時の濃度変化や1年をかけての指数関数的な変動を説明することができない。このことから、今回観測されていたラドン濃度の地震前の変化は先行現象ではないかと考えている。