18:15 〜 19:30
[SCG64-P02] 海底地震観測データの解析から明らかとなった日向灘における浅部低周波微動活動
キーワード:浅部低周波微動, 海底地震観測, 日向灘
2013年5月下旬から6月下旬にかけて,種子島東方沖~宮崎市東方沖の日向灘プレート境界浅部領域において発生した浅部低周波微動活動を,海底地震観測によって捉えることに成功した [Yamashita et al., 2013 AGU fall meeting].本発表では,海底地震計の連続波形データにエンベロープ相関法 [Obara, 2002] を適用し,浅部低周波微動の震源決定を行った結果と活動様式の特徴について報告する.
海底地震観測
2013年4月17日~7月4日にかけて,日向灘南部のプレート境界浅部領域~プレート境界地震発生領域において12台の短期間・短周期海底地震計を用いた海底地震観測を行った.観測は九州大学・鹿児島大学・長崎大学・東京大学の共同研究であり,地震計の設置・回収には長崎大学水産学部練習船「長崎丸」の協力を得た.海底地震観測のうち2台は1Hzのセンサーを搭載している.
震源決定
浅部低周波微動の震源決定には,エンベロープ相関法を用いた.海底地震観測で取得した11観測点の連続波形データに2-8Hzのバンドパスフィルタをかけ,水平2成分を合成し,RMSエンベロープを作成後,20Hzにダウンサンプリングしたデータを用いた.解析は自動処理とし,150秒のmoving windowを75秒ずつ移動させ,各観測点のRMSエンベロープ間の波形相関を計算し,相関係数の最大値が0.85以上の場合にその時刻差を観測点間の相対走時差として採用する.相対走時差データが6データ以上ある場合に,震源をグリッドサーチによって推定した.この際,震源位置と仮定するS波速度も同時に未知数としてサーチした.出力された結果のうち,地震やT-phaseなどのイベントを取り除いて最終的なカタログを作成した.
結果
震源決定の結果,浅部低周波微動活動の特徴が明らかとなった.今回の活動は大きく分けて2つのマイグレーションエピソードで特徴づけられる.初めのエピソード(5月下旬~6月14日頃)では種子島東方沖で活動が始まり,6月10日ごろからS08観測点付近で活発化したあと,北西方向(おおよそプレートの沈み込み方向)に進路を変えて,ちょうどS06観測点付近までマイグレートした.2つめのエピソード(6月17日頃~25日頃)では,S08観測点付近から北西に向かってマイグレートし,6月19~20日頃にはS07観測点付近で活動が活発化,6月21日頃には東にマイグレートしてS09観測点付近で活動が活発化し,その後S07・S09観測点付近で活動が続いた.
考察
今回明らかとなった浅部低周波微動のマイグレーションは,プレート境界浅部で短期的スロースリップが発生していることを強く示唆している.震源域付近には九州パラオリッジが沈み込んでおり,今回の日向灘の浅部低周波微動活動はリッジよりも南側(琉球弧側)に見られ.リッジよりも東側(足摺岬沖)へ進展していない.特に,マイグレーションの方向が北西方向に変化しているS08観測点付近は九州パラオリッジの沈み込みに伴いプレート境界の深さが急激に浅くなる領域である[e.g., Park et al., 2009].つまり,種子島東方沖あたりから浅部低周波微動活動を伴ったスロースリップが北へ進展し,九州パラオリッジにさしかかった際にリッジの高まりに沿ってスロースリップの進展方向が北西方向にシフトしたと考えられ,本研究結果から九州・パラオリッジがこの領域のプレート間すべりの広がりをコントロールするセグメント境界の役割を果たしていることが示唆される.今回見られた浅部低周波微動のマイグレーションパターンの再現性を確認するためにも,海底地震および測地観測を行うことが必要不可欠である.
謝辞
日向灘における海底地震観測では,長崎大学水産学部練習船・長崎丸(兼原壽生船長)の皆様に大変お世話になりました.
海底地震観測
2013年4月17日~7月4日にかけて,日向灘南部のプレート境界浅部領域~プレート境界地震発生領域において12台の短期間・短周期海底地震計を用いた海底地震観測を行った.観測は九州大学・鹿児島大学・長崎大学・東京大学の共同研究であり,地震計の設置・回収には長崎大学水産学部練習船「長崎丸」の協力を得た.海底地震観測のうち2台は1Hzのセンサーを搭載している.
震源決定
浅部低周波微動の震源決定には,エンベロープ相関法を用いた.海底地震観測で取得した11観測点の連続波形データに2-8Hzのバンドパスフィルタをかけ,水平2成分を合成し,RMSエンベロープを作成後,20Hzにダウンサンプリングしたデータを用いた.解析は自動処理とし,150秒のmoving windowを75秒ずつ移動させ,各観測点のRMSエンベロープ間の波形相関を計算し,相関係数の最大値が0.85以上の場合にその時刻差を観測点間の相対走時差として採用する.相対走時差データが6データ以上ある場合に,震源をグリッドサーチによって推定した.この際,震源位置と仮定するS波速度も同時に未知数としてサーチした.出力された結果のうち,地震やT-phaseなどのイベントを取り除いて最終的なカタログを作成した.
結果
震源決定の結果,浅部低周波微動活動の特徴が明らかとなった.今回の活動は大きく分けて2つのマイグレーションエピソードで特徴づけられる.初めのエピソード(5月下旬~6月14日頃)では種子島東方沖で活動が始まり,6月10日ごろからS08観測点付近で活発化したあと,北西方向(おおよそプレートの沈み込み方向)に進路を変えて,ちょうどS06観測点付近までマイグレートした.2つめのエピソード(6月17日頃~25日頃)では,S08観測点付近から北西に向かってマイグレートし,6月19~20日頃にはS07観測点付近で活動が活発化,6月21日頃には東にマイグレートしてS09観測点付近で活動が活発化し,その後S07・S09観測点付近で活動が続いた.
考察
今回明らかとなった浅部低周波微動のマイグレーションは,プレート境界浅部で短期的スロースリップが発生していることを強く示唆している.震源域付近には九州パラオリッジが沈み込んでおり,今回の日向灘の浅部低周波微動活動はリッジよりも南側(琉球弧側)に見られ.リッジよりも東側(足摺岬沖)へ進展していない.特に,マイグレーションの方向が北西方向に変化しているS08観測点付近は九州パラオリッジの沈み込みに伴いプレート境界の深さが急激に浅くなる領域である[e.g., Park et al., 2009].つまり,種子島東方沖あたりから浅部低周波微動活動を伴ったスロースリップが北へ進展し,九州パラオリッジにさしかかった際にリッジの高まりに沿ってスロースリップの進展方向が北西方向にシフトしたと考えられ,本研究結果から九州・パラオリッジがこの領域のプレート間すべりの広がりをコントロールするセグメント境界の役割を果たしていることが示唆される.今回見られた浅部低周波微動のマイグレーションパターンの再現性を確認するためにも,海底地震および測地観測を行うことが必要不可欠である.
謝辞
日向灘における海底地震観測では,長崎大学水産学部練習船・長崎丸(兼原壽生船長)の皆様に大変お世話になりました.