日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG64_30PO1] スロー地震

2014年4月30日(水) 18:15 〜 19:30 3階ポスター会場 (3F)

コンビーナ:*廣瀬 仁(神戸大学都市安全研究センター)、小原 一成(東京大学地震研究所)、中田 令子(海洋研究開発機構)

18:15 〜 19:30

[SCG64-P06] 紀伊半島での短スパン伸縮計アレイ観測

*加納 靖之1細 善信1尾上 謙介1 (1.京大・防災研)

キーワード:伸縮計, スロー地震, アレイ観測

紀伊半島や四国周辺では、深部低周波微動あるいは低周波地震の発生域を中心に、同じ時期に地殻変動(伸縮・傾斜変化)の発生が認められている。たとえば、京都大学防災研究所の紀州観測坑での伸縮計観測では、この地殻変動は発生域に近いほど大きく、低周波微動発生域から30-40 kmの距離で、10-9から10-8程度のひずみ変化が数日にわたって生じることがわかっている。このひずみ変化は、地球潮汐によるひずみ変化と同程度の大きさである。このようなひずみを観測するには従来の伸縮計(横坑式あるいはボアホール式)が有効であるが、観測点数が限られており、詳細な解析には不十分である。特に紀伊半島西部では観測点が少ない。
伸縮計による多点観測のために、安価で観測点の設置が容易な方法と計器の開発が必要である。そこで従来の数十 メートルの基準尺をもつ伸縮計の技術を応用し、基準尺の長さ約1.5 m程度の短スパンの伸縮計を開発した。基準尺はスーパーインバーの丸棒で、自由端(変位測定部)側で吊り枠を1か所設けている。変位の検出には差動トランスを使用した。安定した観測のためには、固定端および測定部を岩盤に強固に固定することが必要と考え、深さ50 cm程度掘削した穴にアンカー(ステンレス棒)をモルタルで固定し、その上部に測器のステージをネジ止めする方式とした。
このような短スパン伸縮計の試験機(1成分)を製作し、京都大学防災研究所の屯鶴峯観測坑(奈良県香芝市)に設置し性能試験を実施した。この試験観測では潮汐変動が明瞭に記録され、遠地地震によるひずみ地震動もとらえている。基準尺の長さが1.5 m程度であっても、低周波微動にともなう地殻変動の観測が可能となることが期待される。
基準尺1.5 mの短スパン伸縮計を田辺市中辺路町に設置し、2012年9月から観測を開始した。この観測点は使わなくなったトンネルを利用している。当初、坑道内の温度変化の影響が大きかったことから、伸縮計を断熱材でおおう、間仕切りを増強するなどの対策をおこなった。そのほか、降雨の影響も受けている。
2013年3月はじめに紀伊半島で低周波地震活動があり、その際の伸縮計データを検討したところ、5×10-9程度の伸縮変化がみられた。その変化の時系列から、変動源が西から東へ移動したことによって説明できることがわかった。これは、低周波地震活動の移動とも調和的な結果である。
田辺市(旧大塔町)など紀伊半島中西部において新たに短スパン伸縮計の設置をおこなっている。これらの新しい観測点に加え、従来の地殻変動連続観測点も用いて、深部低周波微動の発生域をとり囲むようなアレイ観測網を構築する。データを統合して解析することで、スローイベントについてより詳細な解析をおこなうことができると考えられる。