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[SCG65-02] 方解石双晶応力計の分解能:応力の方向と絶対値
キーワード:方解石多結晶体, 双晶, 応力
方解石の結晶は,内部にe双晶ができることで,双晶面に沿った剪断歪みをおこす.この面はc軸に対して3回対称をとように3方向に存在し,剪断方向も結晶学的に特定の方向性を持つ.ひとつの結晶にはe双晶を形成可能な面が3方向にあるが,その面で双晶ができてればtwin,できていなければuntwin面という.双晶面を断層面とみなし,剪断方向を断層変位方向とみなせば,断層の応力インバージョンと同様の考え方ができることがわかる.しかも双晶形成には,双晶面における剪断応力が約10 MPaを超えなければならないという条件があるために,断層の場合と違って差応力の絶対値の推定まで行われてきた(e.g., Lacombe, 2010).方解石のe双晶による応力インバージョン法を確立するために,e双晶で応力がどれだけ制約できるかということについて理論的な基礎研究を行った.その結果,次のことがわかった.応力へのtwin面/untwin面による制約は,結晶が経験した差応力が大きくなるほど強く/弱くなる.そして両者の制約の強さは,差応力の増大とともに等しくなる.また,ひとつの結晶にはe双晶形成可能な面が3方向あるが,そのうちtwin面であるものの数が多いほど応力への制約は強くなる.しかしuntwin面をデータとして利用するならば,サンプリングバイアスに注意すべきである.バイアスは最大で25%にも達する.約200MPaを超える領域では,差応力への分解はなくなる.