日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG65_2AM1] 応力と地殻ダイナミクス

2014年5月2日(金) 09:00 〜 10:45 423 (4F)

コンビーナ:*佐藤 活志(京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻)、今西 和俊(産業技術総合研究所)、大坪 誠(産業技術総合研究所 地質情報研究部門)、加藤 愛太郎(東京大学地震研究所)、座長:今西 和俊(産業技術総合研究所)、佐藤 活志(京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻)

10:00 〜 10:15

[SCG65-05] ボアホール式傾斜計の降雨による変動の時間変化と地殻最大圧縮応力方位-東北地方太平洋沖地震前後の茨城・福島県境付近のケース

*島田 誠一1木村 武志1 (1.防災科学技術研究所)

キーワード:ボアホール式傾斜計, 降雨による変動, 地殻応力方位, 東北地方太平洋沖地震

ボアホール式傾斜計では,一般に降雨による影響は観測点により決まった方位への傾動になることが島田(1987)により明らかにされており,この方位(rainfall component)と直行する方位(rainfall-free component; RFF成分)では降雨のよる変動は見られない.島田(1987, 1989)は,関東・東海地域のボアホール式傾斜計の観測から,RFF成分は,水圧破壊法や中規模以上の地震のメカニズム解から求めた地殻最大圧縮応力方位とおおむね一致することを示した.これは,傾斜計を設置したボアホール近傍にあるopen crackの走向方位がおおむね地殻最大圧縮応力方位と一致するためと考えられる.本報告では,2011年の東北地方太平洋沖地震の前後に当たる2010年4月~12月及び2011年4月~12月・2012年4月~12月の茨城・福島県境付近の防災科研Hi-net高感度加速度計によって得られる傾斜変動データの降雨による変動を調べ,地震前後の地殻主応力の時間変化との関係について考察を試みた.左図には,2010年4月~12月の茨城・福島県境付近の7観測点のRFF成分の方位を示す。IWEH(いわき東)観測点ではRFF成分の方位がほぼ南北になっていて,この観測点近傍では東北地方太平洋沖地震発生前から地殻最大圧縮方位が東西方向ではなかったことが示唆される.この観測点より南の観測点では,この観測点に近く,海岸に近い観測点ほどRFF成分の方位が南北方向に近づいていて,この付近一帯が東北日本の広域の最大圧縮方位である東西方向とは異なる応力場であったことが示唆される.右図に示す2011年4月~12月及び2012年4月~12月の期間では,東北地方太平洋沖地震の誘発地震や余震のために地震前に比べて傾斜計にオフセットやオフセット後の大きなドリフトが,本震に近い時間ほど多く見られて,降雨による傾動変動の検出は2010年ほど容易ではない.このなかで,HTAH(平田)及びYBKH(矢吹)の両観測点では,RFF成分の方位には2010年と比べてほとんど時間変化が見られない.またIWEH観測点も2012年の方位変化が2010年と比べて10°程度であまり変化していない.IWWH観測点ではRFF成分の方位は本震前とは大きく異なり,ほぼ南北方向になっている.DGOH(大子)観測点も本震前にIWWH観測点と本震前にはほとんど同じだったRFF成分の方位は,南北方向に大きく近づいている.THGH(高萩)観測点では,2012年は機械的な異常と考えられる南北成分のノイズが大きく,2011年のRFF成分の方位は2010年とほとんど変化していないようである.JUOH観測点では降雨による変動がほとんど見られず,地殻主応力方位が本震後に変化したために地震前に開いていたクラックが閉じてしまったものと考えられる.茨城・福島県境付近のHi-net観測網によって観測された東北地方太平洋沖地震前後の降雨による傾斜変動から,本震前からIWEH観測点付近の狭い範囲では最大圧縮方位が南北方向であったこと,及び本震後に最大圧縮方位が南北方向に近づく地域が主に西方に広がったことが示されている.