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[SCG65-P03] 物理検層で検出した透水性亀裂と応力場の関係
キーワード:透水性亀裂, 物理検層, 応力場, 引張り破壊亀裂, せん断破壊亀裂
本研究では、産総研が掘削した16地点の硬岩地域の孔井について、透水性亀裂の向きと現在の応力場にどのような関係があるのかについて検討した。産総研は、2006年より紀伊半島から四国周辺において南海トラフで発生する地震の予測研究のための地下水等総合観測点の構築を進め、2013年までに16地点を整備した。各地点では深度約600m、200m、30mの3本の孔井を掘削し、各種の物理検層を実施した。透水性亀裂を含む、孔壁面に認められる全ての亀裂の走向と傾斜角はボアホールテレビュアとボアホールカメラの画像から求めた。また、電気伝導度、速度、温度検層のデータから、透水性亀裂を検出した。応力場については、水圧破砕法により水平主応力値と方位が推定された地点と、水圧破砕法は実施せずに孔壁面の観察からボアホールブレイクアウト等の応力方位の情報を得た地点がある。以下では、水圧破砕法により応力場を評価した6地点において検討した結果を示す。6地点は土佐清水市、新居浜市、熊野市、津市、西尾市、豊田市にそれぞれ位置する。
6つの各地点で検出した全亀裂は約2,000から5,000個の範囲であり、そのうち透水性亀裂は約20から30個である。各地点の全亀裂の向きをそれぞれ表示すると、様々な走向と傾斜角を持つ亀裂が分布する。ここで、走向が最大水平圧縮応力方向に平行で高角(鉛直方向に近い)な傾斜角をもつものを引張り破壊型亀裂、また亀裂の強度を摩擦係数μ(μ≧0.4)により記述されるクーロンの破壊基準で仮定した走向・傾斜角をもつ亀裂をせん断破壊型亀裂と呼ぶこととする。今回のいずれの地点においても、引張り破壊型あるいはせん断破壊型に対応する亀裂の走向・傾斜角の領域だけを用いて、全亀裂の分布の特徴を説明することは困難である。つまり、現在の応力場と見掛け上相関が無いと思われる向きを持つ亀裂も多数存在する。次に、透水性亀裂についてその走向と傾斜角の分布を調べると、新居浜地点では、引張り破壊型亀裂が卓越する傾向を示し、これは、現在の応力場に強く影響を受けている可能性を示す。一方、新居浜地点以外の5地点では、透水性亀裂の向きの分布は全亀裂の分布傾向と類似した特徴を持ち、特に透水性亀裂が現在の応力場の影響を受けているとは言えない。今後、これら以外の地点における全亀裂及び透水性亀裂の向きと応力方位の相関の結果も含めて、地下亀裂の透水性の不均一の要因の解明を進めたい。
6つの各地点で検出した全亀裂は約2,000から5,000個の範囲であり、そのうち透水性亀裂は約20から30個である。各地点の全亀裂の向きをそれぞれ表示すると、様々な走向と傾斜角を持つ亀裂が分布する。ここで、走向が最大水平圧縮応力方向に平行で高角(鉛直方向に近い)な傾斜角をもつものを引張り破壊型亀裂、また亀裂の強度を摩擦係数μ(μ≧0.4)により記述されるクーロンの破壊基準で仮定した走向・傾斜角をもつ亀裂をせん断破壊型亀裂と呼ぶこととする。今回のいずれの地点においても、引張り破壊型あるいはせん断破壊型に対応する亀裂の走向・傾斜角の領域だけを用いて、全亀裂の分布の特徴を説明することは困難である。つまり、現在の応力場と見掛け上相関が無いと思われる向きを持つ亀裂も多数存在する。次に、透水性亀裂についてその走向と傾斜角の分布を調べると、新居浜地点では、引張り破壊型亀裂が卓越する傾向を示し、これは、現在の応力場に強く影響を受けている可能性を示す。一方、新居浜地点以外の5地点では、透水性亀裂の向きの分布は全亀裂の分布傾向と類似した特徴を持ち、特に透水性亀裂が現在の応力場の影響を受けているとは言えない。今後、これら以外の地点における全亀裂及び透水性亀裂の向きと応力方位の相関の結果も含めて、地下亀裂の透水性の不均一の要因の解明を進めたい。