日本地球惑星科学連合2014年大会

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ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG65_2PO1] 応力と地殻ダイナミクス

2014年5月2日(金) 16:15 〜 17:30 3階ポスター会場 (3F)

コンビーナ:*佐藤 活志(京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻)、今西 和俊(産業技術総合研究所)、大坪 誠(産業技術総合研究所 地質情報研究部門)、加藤 愛太郎(東京大学地震研究所)

16:15 〜 17:30

[SCG65-P04] 引きはがし付加体における古応力の変化 沖縄四万十付加体始新統嘉陽層の例

*橋本 善孝1本宮 裕平1氏家 恒太郎2 (1.高知大学、2.筑波大学)

キーワード:応力, 小断層解析, 四万十帯, 沖縄

沈み込み帯における応力状態を理解することは、付加体の発達や断層強度、地震発生のプロセスを明らかにすることに繋がる。本研究の目的は引きはがし付加体である沖縄本島の嘉陽層を対象に小断層スリップデータを用いて古応力の解析を行い、深度を与えることによって応力の半定量化を試みることである。
調査地域である沖縄本島東海岸沿い嘉陽層は主としてタービダイトから形成されており、褶曲・衝上断層によって強く変形している(Ujiie,1997)。この褶曲に伴う層面すべりが一般的に観察できるほか、層を切る断層も多数見られた。
小断層の断層面の走向と傾斜、断層面に発達しているスリッケンライン・ステップからレイク及び運動のセンスを取得し、スリップデータとした。海岸沿いの調査地域約2kmから合計で153個の断層スリップデータを得た。ソフトウェアMIM(Yamaji,2000)およびK-means clustering(Ostubo et al,2007)を使い、応力解析を行った。また、得られた応力をstress polygonに投影し、深度5kmを与えることによって各応力の大きさの半定量を試みた。
小断層解析の結果4つの応力解を得た。この時、応力比はΦ=(σ2-σ3)/(σ1-σ3)とする。得られた応力は,KY1)低角なNE-SE圧縮(Φ=0.88),KY2)KY3)高角なNW-SE圧縮(Φ=0.22,0.45),KY4)低角なNW-SE圧縮(Φ=0.65)である。また、4つの応力解に対応した小断層は、KY1),KY4)では逆断層が多く、KY2),KY3)では正断層しかないことがわかった。4つの解をstress polygonに投影し、先の断層センスで規制すると、半定量的な応力を得ることができる。この定量された応力を用いて、水平なデコルマ面を仮定したときの剪断応力τは、正断層(KY2, KY3)ではおよそ39-60MPa, 逆断層(KY1, KY4)ではおよそ48-212MPaであった。逆断層の剪断応力は正断層の剪断応力よりも大きいことがわかる。この応力の大きさの差が地震前と地震後の応力解放を示していると考えると、求められる応力解放量は-16.2~173.1[MPa]と求めることができた。一般的に地震の応力解放量0.03~30[MPa]と言われており、その範囲を含んでかつ大きく逸脱した結果も得られた。一般的な地震の応力解放量で規制すると、正断層で水平応力が65-110MPa, 逆断層で水平応力が120-170MPaという範囲に絞ることができる。今後は小断層の形成深度を検討し、応力開放量として捉えることそのものの妥当性も含めて、議論していく必要がある。