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[SCG67-18] 東北日本の熱流量異常を説明する熱モデル:海溝軸に向かって厚くなる透水層内で起こる熱水循環による熱の汲み上げ
キーワード:熱水循環, 熱流量, 日本海溝, 地震発生帯
観測:日本海溝には、年代135 Myrの太平洋プレートが速度約8 cm/yrで沈み込む。このような古い年代のプレート上の熱流量は、中央海嶺で形成された海洋プレートが海底面から冷やされる熱伝導過程を考えた場合、50m W/m2程度と予想される (Stein and Stein, 1992)。これに対して、これまでに観測された熱流量値は50-120 mW/m2、平均値は70 mW/m2である (Yamano et al., 2008)。この日本海溝では、プレート最上部数kmに高Vp/Vsの層が観測されている (Fujie et al., 2013)。この層は、海溝の150 km海側から海溝にかけて徐々に厚くなっている。熱流量に異常が生じる範囲と、地震波速度に異常が生じる範囲は同程度であり、何らかの関連があることが推察される。仮説:海洋プレートを構成する玄武岩の浸透率が、最上部数100 mで熱水循環を引き起こす程度に高いことが知られており、この層は透水層と呼ばれている。我々は、Fujie et al. (2013) が観測した高Vp/Vs層の厚化は、高浸透率の層が厚くなった結果であると考えた。この考えの元、透水層が時間と共に厚くなる系での熱対流モデルを作り、どのような熱流量異常が生じるかを計算した。結果:日本海溝に対する典型的なパラメータを用いて計算を行った。その結果、透水層の厚化とともに熱流量が増加することが分かった。すなわち、Yamano et al. (2008) が観測した高熱流量異常20 mw/m2を説明することができる。この熱流量異常の原因は、時間とともに厚くなる透水層の下からの熱の汲み上げである。深くなるほどプレート温度が高いこと、熱対流が起こる透水層はほぼ等温に置かれることを念頭に置くと、透水層が下方に厚くなることは等温の部分が高温の領域に浸食していくことを意味する。厚くなりつつある透水層は、下方から次々にやってくる熱を強制的に上側に放出することで等温の状態を保つ。このことで、透水層の上側にある堆積層は熱を受け取って温度が上がり、したがって熱流量もまた上がる。