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[SCG68-06] 重力測定に基づく双葉断層北部周辺の浅部地質構造の推定
キーワード:双葉断層, 重力異常, 活断層
1.はじめに 双葉断層は数百mの破砕帯を伴う阿武隈山地の東縁を画する断層で,白亜紀および古第三紀に大規模な左横ずれ断層として活動したといわれている.この断層は,NNW-SSE走向で,北部では割山ホルストを境に東西2条の断層に分かれる.前期から中期中新世には,東西方向の引張応力場のもとで西側の断層が正断層として活動し,半地溝を形成し,崖錐性角礫や砕屑性堆積物により埋積された.その後,右横ずれ断層として活動した後,現在は西側隆起成分をもつ左横ずれ断層として活動しているとされている.このように双葉断層の活動史は複雑であり,それぞれの活動に伴う地質構造との関連は十分に明らかにされていない.そこで,本研究では重力調査により,地下密度構造を推定し,反射法地震探査や屈折法地震探査の結果とあわせて,地下地質構造の推定を行った.2.重力測定・解析 重力調査は,福島県相馬郡新地町から宮城県伊具郡丸森町に至る東西約12kmの測線1と宮城県亘理郡山元町から角田市に至る約13kmの測線2で行った.測定点数はそれぞれ71および60で,測定点間隔は200mを基本とした.使用した重力計は,LaCoste & Romberg 社製 G 型重力計(G824)である.観測点の標高は,主に電子レベルを使用して測定し,一部RTK-GPSを用いた.取得したデータの処理は、概ね地質調査総合センター(2004)に従っているが,球面ブーゲー補正の補正範囲は,地形補正の補正範囲に合わせて45kmとした.また,ブーゲー補正および地形補正に用いた仮定密度は,調査地域の地質や屈折法地震探査の結果を考慮して,2.20 g/cm3とした.得られたブーゲー異常に対して,広域的な重力異常の影響を取り除くためトレンド補正を行った.3.結果 いずれの測線においても,トレンド補正後のブーゲー異常値は,先新生界の基盤岩が分布する割山ホルストで最大となり,その西側でいくつかの極大値を示す.4.密度構造モデルと地質構造 密度構造モデルでは,調査地域の地質を考慮して,密度の異なる4層(第1層:2.00g/cm3,第2層:2.20g/cm3, 第3層:2.55g/cm3,第4層:2.67g/cm3)を仮定した.上位から第1層は表層構成層や鮮新統,第2層は中新統,第3層は中新統の礫岩,第4層は基盤岩類に相当する.割山ホルストの西側では第2層と第3層の間に,東側では第2層と第4層の間に上下が逆転する部分があると推定した. 割山ホルストの西側に分布する下部から中部中新統は,西側の双葉断層によって東縁を画されており,さらに西側ではいくつかの伏在する正断層で変位を受けている.また,西側の双葉断層から派生した断層により,第2層と第3層が逆断層変位を受けている.東側の双葉断層は西側の双葉断層のショートカット断層と位置づけられる. 講演ではこれらの断層と地質構造発達史との関連を示す予定である. 文献 地質調査総合センター,2004,日本重力CD-ROM,第2 版.