日本地球惑星科学連合2014年大会

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口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-EM 固体地球電磁気学

[S-EM36_30PM1] 電気伝導度・地殻活動電磁気学

2014年4月30日(水) 15:15 〜 16:00 413 (4F)

コンビーナ:*山崎 健一(京都大学防災研究所)、多田 訓子(海洋研究開発機構)、座長:山崎 健一(京都大学防災研究所)、多田 訓子(海洋研究開発機構)

15:30 〜 15:45

[SEM36-02] 水深に基づく津波ダイナモ現象の分類

*南 拓人1藤 浩明1 (1.京都大学大学院理学研究科)

キーワード:津波, ダイナモ, 孤立波, 海底観測, 有限要素法

良導体である海水が地球主磁場中を運動すると、ダイナモ効果が生じ電磁場が誘導される。この効果は海洋ダイナモ効果として古くから(例えばFaraday, 1832)よく知られており、主に潮汐や準定常海流などの長周期現象について研究が行われてきた。しかし近年、海底電磁場観測技術の進歩により、津波も顕著な海洋ダイナモ効果を伴うことが明らかになった。 Toh et al. (2011) は、2006年及び2007年千島列島沖地震津波により誘導された電磁場を、北西太平洋の海底で実際に観測した例を報告した。Toh et al. (2011) 以降現在まで、多くの津波起因の海洋ダイナモ現象例 (以下、津波ダイナモ現象) が報告されている (e.g., Manoj et al. 2011; Suetsugu et al., 2012; Ichihara et al., 2013)。 これらの津波ダイナモ現象を説明するために、先行研究では主にTyler (2005)による解析解 が用いられてきた。Tyler (2005)による解析解は非常に簡便かつ有用であるが、解析解だけでは現象の物理的理解には繋がらない。 そこで本研究では、解析解に基づいた理論と孤立波を扱った数値計算との比較により、津波ダイナモ現象が磁場の誘導方程式における拡散項の大小で分類できることを明らかにした。津波ダイナモ現象の場合、拡散項の大小は、主に水深によって変化する事を二次元の計算結果は示した。すなわち,水深の浅い海域では、拡散項が大きくなる一方、自己誘導の影響が小さくなるため、海水運動vと地球主磁場Fとのカップリング (v×F) によって生じる磁場は、ほとんど減衰されることなくそのまま海底や海面で観測される。この場合の津波ダイナモ現象は,アンペールの法則のみによっても現象の説明がほぼ可能である。一方、水深が深くなると、拡散項が小さく、同時に自己誘導の効果が大きくなるため、v×Fによって生じた磁場は大きく減衰される。特に、水深が5000mを越えた海域では,v×Fによって生じた磁場に比べて観測される海底磁場変化は、振幅にして七割以下,位相角にして70度以上遅れることとなる。Minami and Toh (2013) で報告された津波ダイナモ現象の場合、北西太平洋に設置された観測点の水深が約5600mであったため、自己誘導が支配的な現象を観測していたものと判断できる。このことは、観測された磁場鉛直成分の変化波形が,電磁場観測点最寄りの海底圧力変化(=波高変化)と位相を含めて酷似していたことと整合する。さらに、解析解を用いた理論計算では、津波波高を1mに固定した場合、津波の引き起こす磁場の振幅は、水深に対する依存性が異なる拡散項と自己誘導項とのバランスにより、水深2000m付近で最大になることが明らかとなった。 本発表では、津波ダイナモ現象の分類法、及び、水深に応じてどのように津波電磁場が変化するかについて、考察結果を報告する。また、Minami and Toh (2013)で報告された、津波到来に先んじて観測される磁場水平成分の変動 (initial rise) の水深依存性についても議論する。