日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-EM 固体地球電磁気学

[S-EM36_30PM1] 電気伝導度・地殻活動電磁気学

2014年4月30日(水) 15:15 〜 16:00 413 (4F)

コンビーナ:*山崎 健一(京都大学防災研究所)、多田 訓子(海洋研究開発機構)、座長:山崎 健一(京都大学防災研究所)、多田 訓子(海洋研究開発機構)

15:45 〜 16:00

[SEM36-03] 地震で励起された電磁波から地中媒質の電気的パラメータの算出

*筒井 稔1 (1.京都産業大学 コンピュータ理工学部)

キーワード:地震波, 電磁波, 地中観測, 表皮の厚さ, 電気伝導度

京都産業大学では以前から地中で電磁波が励起されるかどうかを確かめるための観測研究を行ってきたが、周波数が数kHz については殆ど全てが雷放電によるもので、地中起源の電磁波は全く見つける事が出来なかった。しかし、2011年の12月から検出対象周波数を25 Hz以下にしたところ、電磁波観測点での震度が1以上であれば地震により励起された電磁波を検出確認できる事を明らかにした。2013年の3月以降は地震励起電磁波と地震波の波形同時観測を行ってきた結果、地震波が伝搬している近傍では常に電磁波も励起されている事を示した[1]。地中では電気伝導度が高いために、残念ながら励起された電磁波は遠距離まで伝搬出来ないが、周波数の低い(25 Hz以下)電磁波は、地中でもある程度伝搬出来る事が明らかとなってきた。 2013年12月25日に電磁波観測点から極めて近い5.4 km北の、深さ10 kmという場所でM3.0の地震が発生した。これは震源が観測点に対して伏角が約60度の方向にあった。この時、京都産業大学構内での電磁波観測点で地震波3軸成分と電磁波の磁界3軸成分の波形を同時に取得できた。震源に対する伏角が約60度と極めて大きいため、地震波はほぼ上向きに伝搬しており、振動波形の垂直成分観測ではP-波(縦波)成分が極端に卓越しており、S波との分離は困難な状態であった。一方、水平振動成分の測定では、P-波が約1.8秒続いた後に明瞭なS-波の到来を示す典型的な波形が得られた。これをFig.1(a)に示す。図から明らかなように、S-波は極めてシャープでしかも短時間で終了している。これは地震が極めて近いため、他の地層境界からの反射波等が含まれていないためと思われる。これに対してほぼ同時に検出された地中電磁波の磁界の水平成分の振動には興味のある波形が現れている。それをFig.1(b)に示す。これによると電磁波の磁界成分はS-波の到来する約1秒前からその振幅が指数関数的に増加し、S-波の到来時点で最大となり、それを過ぎると徐々に減小する形となっている。この現象は以下のように説明する事ができる。岩盤内ではP-波であれS-波であれ、地震波が存在すると圧電効果により常に電磁波が励起されており、岩盤からは電磁波が放射されている。S-波は特に強い電磁波を放射する波源と見なす事ができ、これがS-波の速度で伝搬してくる。しかし、地中内では電気伝導度が高いため、放射された電磁波の振幅は空間的には指数関数的に減衰する形をしている。このため電磁波観測点に向かって一定速度(S波の)で到来する電磁波源からの電磁波振幅を観測点で見ると時間的に指数関数的に増加する形をとる。更にその観測点を過ぎた電磁波源からの電磁波振幅は指数関数的に減衰する形をとなる。これがFig. 1(b)に現れた電磁波振幅の時間変化を示しているものと思われる。これにより、地中における電磁波振幅の空間距離依存性が得られるので、それを対数グラフにプロットする事により、地中媒質の電磁波に対する表皮の厚さ(Skin depth)を算出する事ができる。Fig.1(b)のデータについてこれを適用した結果、周波数20 Hz のこの地中でのSkin depthは約850mであり、電気伝導度は0.0175 S/mが得られた。またこの時、電磁波は約2 kmの深さから放射された電磁波を検出できた事を示している。 [1] M. Tsutsui, submitted to IEEE Geoscience, Letters, 2014.