日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-EM 固体地球電磁気学

[S-EM36_30PM2] 電気伝導度・地殻活動電磁気学

2014年4月30日(水) 16:15 〜 17:45 413 (4F)

コンビーナ:*山崎 健一(京都大学防災研究所)、多田 訓子(海洋研究開発機構)、座長:多田 訓子(海洋研究開発機構)、山崎 健一(京都大学防災研究所)

17:15 〜 17:30

[SEM36-07] 野島断層1800m深注水実験時における自然電位観測序報

*村上 英記1比嘉 哲也2鈴木 健士2吉村 令慧2後藤 忠徳3川崎 慎吾4大内 悠平5山口 覚6 (1.高知大学教育研究部自然科学系理学部門、2.京都大学大学院理学研究科、3.京都大学大学院工学研究科、4.京都大学防災研究所、5.大阪市立大学理学部、6.大阪市立大学大学院理学研究科)

キーワード:野島断層, 1995年兵庫県南部地震, 自然電位, 注水実験, 流動電位

1995年兵庫県南部地震(Mw6.9)の地表地震断層である野島断層の深さ1800mの断層破砕帯に対する注水実験期間中に、1800m注水孔および地表断層に近い500m孔の周辺にて自然電位の観測を実施した。注水期間は2013年9月15日から29日までで、注水の平均流量は2リットル/分、圧力5MPaでおこなわれた。野島断層における注水実験は、断層の回復過程をモニタリングする目的で1997年、2000年、2003年、2004年、2006年、2008年と実施されてきたが、いずれの実験でも深さ540m付近のパイプの継手部分からの流出であったことが孔内温度計のデータから推定されている。今回の注水実験では、540mからの漏水防止の工事をおこない注水を実施したので1800mの注水孔先端部から断層破砕帯への注水がおこなわれたものと推測される。しかし工事途中のトラブルのため孔内温度計による計測が実施されていないので注水深度に関する直接的な情報はない。 自然電位の観測を2013年9月6日から10月21日まで、従来の注水実験同様に1800m注水孔周辺にて実施した。また、今回初めて注水孔の北西約250mに位置する500m孔の周辺でも自然電位の観測をおこなった。1800m注水孔の周辺では18箇所(1800m孔、800m孔を電極とする2点を含む)、500m孔周辺では地表の9箇所および500m孔の中の4箇所の電極(深さ500m、440m、380m、および320m)を使い測定を実施した。1800m孔および800m孔のケーシング・パイプおよび500m孔内の電極を除く地表に設置した電極には銅―硫酸銅電極を使用した。1800m注水孔周辺の18箇所の自然電位については1秒間隔、500m孔周辺の13箇所については1分間隔で記録した。 1997年から2008年までの注水実験時の自然電位観測では、3つの特徴的な自然電位変動が観測されていた:1)注水の開始・停止に同期した自然電位変動、2)注水孔周辺が負に変動する、3)注水孔からの距離が大きくなると変動量が小さくなる。これらの自然電位の特性から、観測している自然電位変動は注水に伴う流動電位を観測しているものとして、同レベルの流量・圧力に対する自然電位変動が年々大きくなることを地下の水理パラメータが年々小さくなっているものと推定した。この結果は、同時に観測している800m孔の湧水量の変化や歪データなどから推定されている結論と調和的であった。ただし、2006年くらいから一部の電極で逆センスの変動がみられるようになり、1800mケーシング・パイプも逆センスに変動することがわかっている。 今回の注水実験期間中に観測した自然電位変動は、最近の観測結果と異なり生データで注水の開始と停止との明瞭な対応が見られない。S/N比が悪いので断定できる状況にはないが特に停止に対応した回復が明瞭ではない。また、今回初めて観測した500m孔周辺でも1800m孔周辺と同期した自然電位変動が観測されている。これらの自然電位変動は地磁気変動による誘導電流によるものではないことは確認できている。 独立成分分析を用いた予察的な解析では、注水期間前半は振動的な変動であり後半には2mV程度の負側への自然電位変動が1800m注水孔近傍の電極では見られるがこの大きさは従来の変動と比べて極めて小さい。一部の電極や1800mケーシング・パイプでの電位が逆センスであることは2006年以降の観測と調和的である。注水作業に伴うノイズの影響と考えられる変動が大きくさらなるノイズ軽減策が必要であるが、従来の数mVから10mVを超える変動に比べて極めて小さな変化であった。今回観測されている注水期間中の自然電位変動の特性は、深さ1800mの断層破砕帯においてはまだ水が通りやすい状況にあるために発生する流動電位が小さいのか、1800m注水孔のケーシング・パイプが理想的な導体ではなく有限な比抵抗値を持つために地表での値が小さくなっているのかは、今後の検討課題である。