18:15 〜 19:30
[SEM36-P04] 山田断層帯郷村断層(京都府京丹後市)の地下比抵抗構造の特徴
キーワード:郷村断層, 比抵抗構造, 地磁気地電流法, ダメージゾーン
はじめに
断層には規模の大小にかかわらずDamage zoneが伴われる.Damage zoneとは断層ガウジの外側に発達し,断層運動に関連したすべての変形を含む領域である(Vermilye and Scholz,1998).Damage zoneでは空隙率が高く,水が浸入すると周りの岩石よりも比抵抗値が低くなる.そのため,地下の比抵抗構造を調べることにより,地下の断層構造を推定することができる.
地下の比抵抗構造を調べる手法の1つに地磁気地電流法(Magnetotelluric法:MT法)がある.MT法とは,地球磁場の変動と,それによって大地に誘導される電場の変動とを同時に観測し,両者の振幅比と位相差から地下の比抵抗構造を推定する方法である.可聴波数帯(10000Hz~1Hz程度)の磁場変動を信号源とするMT法をAudio-frequency Magnetotelluric法(AMT法)と呼ぶ.AMT法では,高い周波数帯の電磁場の変動を信号源として用いるため,地下数kmまでの比較的浅い部分の比抵抗構造を高い分解能で描くことができる.また,1つの地点での観測に必要な時間が短いため,多数の観測点で観測を行うことができる.
山田断層帯は山田断層帯主部と郷村断層帯に分けられる.郷村断層帯は,郷村断層,丹後半島北西沖合の断層,仲禅寺断層などで構成される(地震調査委員会,2004).郷村断層は,京都府京丹後市に位置し,北北西-南南東方向に延びる断層である.1927年,マグニチュード7.3の北丹後地震に伴って出現した.陸上で確認される部分の長さは13kmに及び,郷村断層の延長上の沖合約13kmにも郷村断層と同じ走向の断層が認められている.また,岡田(2002)より,破砕帯幅が0.1mから0.9mであることが確認されている.
郷村断層の東側約2~3kmのところには仲禅寺断層が,郷村断層の西側約800mのところには郷西方断層が並走している.松田(1990)の起震断層の定義に基づけば,郷村断層,丹後半島北西沖合の断層,仲禅寺断層,郷西方断層は,1つの断層帯を構成していると考えられる.
本研究では,郷村断層を横切る測線に沿って行った.AMT探査の概要と地下比抵抗構造について報告する.
観測と解析
郷村断層を横切る約4kmの測線上に12点の観測点を設けた.また,Remote reference処理を行うため,最東端の観測点から北東に10kmのところに磁場参照点を設置した.
それぞれの地点での夜間の観測データを基に,Phoenix社(カナダ)の解析ソフトSSMT2000を用いてMT応答関数を算出した.次に,Phase Tensor法(Caldwell et al., 2004; Bibby et al., 2005)を用い,比抵抗構造の次元を判定した.その結果を基に,Ogawa and Uchida(1996)による平滑化拘束付き2次元比抵抗構造モデルインバージョンコードを用いて深さ1.5kmまでの2次元比抵抗モデル(GMRモデル)を求めた.
GMRモデルの特徴
GMRモデルは4つの低比抵抗領域と2つの高比抵抗領域で特徴づけられる.
C1:郷村断層地表トレースの南西側約2kmの深さ0.15km以深に存在する幅1kmの低比抵抗領域(102.5Ωm以下)
C2:郷西方断層地表トレース直下の深さ0.15km~0.3kmに存在する幅0.75kmの低比抵抗領域(102.5Ωm以下)
C3:郷村断層地表トレース直下の深さ0.45km~1kmに存在する幅1.3kmの低比抵抗領域(102.5Ωm以下)
C4:郷村断層地表トレースの北東約2kmの深さ0.5km~1.4kmに存在する幅0.7kmの低比抵抗領域(102.5Ωm以下)
R1:郷西方断層地表トレース直下深さ0.4kmの深さ0.3km~1kmに存在する幅1.1kmの高比抵抗領域(103Ωm以上)
R2:郷村断層地表トレースの北東約1kmの深さ0.25km~0.7kmに存在する幅1.6kmの高比抵抗領域(103Ωm以上)
考察
郷村断層地表トレース直下の低比抵抗領域C3の幅は650m以上あることが検証された.Vermilye and Scholz(1998)の関係式から導いたDamage zoneの片側幅と,低比抵抗領域C3の片側幅が同じ規模であった.また,郷村断層周辺では,岩石の部分溶融,岩石の温度上昇,導電性物質の存在によって低比抵抗領域ができるとは考えづらい.この低比抵抗領域C3は郷村断層のDamage zoneに水が浸入したものだと推定した.よって,郷村断層は深さ0.45kmから1kmに幅650mのダメージゾーンが形成されていると解釈した.
断層には規模の大小にかかわらずDamage zoneが伴われる.Damage zoneとは断層ガウジの外側に発達し,断層運動に関連したすべての変形を含む領域である(Vermilye and Scholz,1998).Damage zoneでは空隙率が高く,水が浸入すると周りの岩石よりも比抵抗値が低くなる.そのため,地下の比抵抗構造を調べることにより,地下の断層構造を推定することができる.
地下の比抵抗構造を調べる手法の1つに地磁気地電流法(Magnetotelluric法:MT法)がある.MT法とは,地球磁場の変動と,それによって大地に誘導される電場の変動とを同時に観測し,両者の振幅比と位相差から地下の比抵抗構造を推定する方法である.可聴波数帯(10000Hz~1Hz程度)の磁場変動を信号源とするMT法をAudio-frequency Magnetotelluric法(AMT法)と呼ぶ.AMT法では,高い周波数帯の電磁場の変動を信号源として用いるため,地下数kmまでの比較的浅い部分の比抵抗構造を高い分解能で描くことができる.また,1つの地点での観測に必要な時間が短いため,多数の観測点で観測を行うことができる.
山田断層帯は山田断層帯主部と郷村断層帯に分けられる.郷村断層帯は,郷村断層,丹後半島北西沖合の断層,仲禅寺断層などで構成される(地震調査委員会,2004).郷村断層は,京都府京丹後市に位置し,北北西-南南東方向に延びる断層である.1927年,マグニチュード7.3の北丹後地震に伴って出現した.陸上で確認される部分の長さは13kmに及び,郷村断層の延長上の沖合約13kmにも郷村断層と同じ走向の断層が認められている.また,岡田(2002)より,破砕帯幅が0.1mから0.9mであることが確認されている.
郷村断層の東側約2~3kmのところには仲禅寺断層が,郷村断層の西側約800mのところには郷西方断層が並走している.松田(1990)の起震断層の定義に基づけば,郷村断層,丹後半島北西沖合の断層,仲禅寺断層,郷西方断層は,1つの断層帯を構成していると考えられる.
本研究では,郷村断層を横切る測線に沿って行った.AMT探査の概要と地下比抵抗構造について報告する.
観測と解析
郷村断層を横切る約4kmの測線上に12点の観測点を設けた.また,Remote reference処理を行うため,最東端の観測点から北東に10kmのところに磁場参照点を設置した.
それぞれの地点での夜間の観測データを基に,Phoenix社(カナダ)の解析ソフトSSMT2000を用いてMT応答関数を算出した.次に,Phase Tensor法(Caldwell et al., 2004; Bibby et al., 2005)を用い,比抵抗構造の次元を判定した.その結果を基に,Ogawa and Uchida(1996)による平滑化拘束付き2次元比抵抗構造モデルインバージョンコードを用いて深さ1.5kmまでの2次元比抵抗モデル(GMRモデル)を求めた.
GMRモデルの特徴
GMRモデルは4つの低比抵抗領域と2つの高比抵抗領域で特徴づけられる.
C1:郷村断層地表トレースの南西側約2kmの深さ0.15km以深に存在する幅1kmの低比抵抗領域(102.5Ωm以下)
C2:郷西方断層地表トレース直下の深さ0.15km~0.3kmに存在する幅0.75kmの低比抵抗領域(102.5Ωm以下)
C3:郷村断層地表トレース直下の深さ0.45km~1kmに存在する幅1.3kmの低比抵抗領域(102.5Ωm以下)
C4:郷村断層地表トレースの北東約2kmの深さ0.5km~1.4kmに存在する幅0.7kmの低比抵抗領域(102.5Ωm以下)
R1:郷西方断層地表トレース直下深さ0.4kmの深さ0.3km~1kmに存在する幅1.1kmの高比抵抗領域(103Ωm以上)
R2:郷村断層地表トレースの北東約1kmの深さ0.25km~0.7kmに存在する幅1.6kmの高比抵抗領域(103Ωm以上)
考察
郷村断層地表トレース直下の低比抵抗領域C3の幅は650m以上あることが検証された.Vermilye and Scholz(1998)の関係式から導いたDamage zoneの片側幅と,低比抵抗領域C3の片側幅が同じ規模であった.また,郷村断層周辺では,岩石の部分溶融,岩石の温度上昇,導電性物質の存在によって低比抵抗領域ができるとは考えづらい.この低比抵抗領域C3は郷村断層のDamage zoneに水が浸入したものだと推定した.よって,郷村断層は深さ0.45kmから1kmに幅650mのダメージゾーンが形成されていると解釈した.