18:15 〜 19:30
[SEM36-P05] 中国・四国地方の比抵抗観測研究の概要
キーワード:電気比抵抗, 中国四国地方, 不均質
本研究の目的は,地殻深部低比抵抗領域と地震活動の関連を明らかにするために,西南日本島弧の縦断方向ならびに横断方向の電気比抵抗構造断面を推定することである. このために,日本列島弧,西南日本弧を横断・縦断する電気比抵抗構造の調査研究から,主に山陰地域では,歪み集中帯外における地震発生と比較的長い期間噴火記録のない火山と地殻流体との関連を解明すること,内陸地震発生域と内陸地震空白域(第3種及び第四紀火山下)および深部低周波地震の構造的不均質性,また,四国地方では,地殻地震および深部低周波地震の発生様式と構造的地域性等について,沈み込む海洋プレートから供給が想定される流体と関連づける観測研究を行っている.
これまでに京都大学防災研究所並びに鳥取大学工学部を中心とする研究グループは,山陰地方や四国地方外帯において電気比抵抗構造と地震活動の間に密接な関連がみられることを示してきた.例えば,山陰地方東部では(鳥取地震(1943年,M=7.2)の地震断層である吉岡・鹿野断層をはじめとして,鳥取県西部地震(2000年,M=7.3)等)顕著な地震の震源域およびそれらを含み日本海沿岸部に沿う帯状の地震活動域を横切る測線で深部地殻比抵抗構造調査を実施し,その結果,ほぼ東西方向に伸びる地震活動帯に沿って,高比抵抗領域である地震発生層の下,地殻深部に低比抵抗領域の存在を明らかにした.
しかしながら,尾崎他(2011) は,鳥取県中西部の地震(2002 年,Mj5.3)発生域の南北横断測線から推定された比抵抗モデルの特徴として地殻は全般的に高比抵抗であることを示した.この観測事実は,上述のこれまでに筆者を含む山陰地方の電気比抵抗を研究するグループが提唱してきたモデルと調和しない. さらに,塩崎他(2013)は,同地震発生域直近の2地点(志津および岡)の補観測により得られたデータの特徴から地殻深部に低比抵抗領域の存在を示唆した.これは前調査の観測データにはみられなかった新しい特徴である.僅か数km しか離れていない地点で探査曲線の形状に違いがみられることになる
すなわち,既存研究より東西方向に隣接する地域で指摘されたような山陰地方下の10 Ω m 以下の深部低比抵抗領域がみられず,ここでは山陰地方の深部低比抵抗領域は連続して存在しない可能性がある. 内陸地震が地震活動帯の直下の不均質構造に起因する局所的な応力集中により発生する(飯尾,2009)ならば,この不均質構造について,今後はさらなる面的な構造データの充実を図ることが必要であるととともに既存データをもとにした広域の比抵抗構造の空間的特徴を明らかにする必要がある.
一方,四国地方においては,これまで,主に中央構造線南側の外帯で同様の調査を行い,その予察的な結果から,外帯の上部地殻内に顕著な低比抵抗領域が存在すること,それが中央部・西部では無地震域と明瞭な関連がみられることが示唆された.また,西南日本弧を横断する調査研究に関して島弧横断「山陰-山陽-四国地方(鳥取東部-岡山-香川-徳島-室戸)」測線の構造解析から得られた四国地方東部並びに中国地方東部の2次元比抵抗構造断面図と佐藤ほか(2005) やIto et al.(2009) の求めた詳細な地震反射波断面を比較検討し,いずれの地域でも比抵抗構造と反射法探査により示された反射断面と地質構造解釈との間に明瞭な対応関係がみられる領域が存在することを確認した.
このような観測事実は,低比抵抗領域をもたらすもの,おそらくは地殻流体(水)が,地震発生に関して重要な役割を果たす可能性を示す.その地殻流体の供給源の一つの候補として沈み込むフィリピン海プレートの脱水反応に伴う水が想定されるが,西南日本弧では,北部地域(中国地方)において海洋プレートの沈み込みの様子がまだ完全にわかっていない.西南日本弧において海溝から背弧側までの全体像をつかむ上でも,中国・四国地方広域の深部比抵抗構造探査をもとにした定量的な議論の展開が望まれる.従って,中国地方から四国地方にかけての島弧横断構造断面の作成に関しては,フィリピン海プレートの北限位置の問題にこたえるために,瀬戸内海側の未測定地域を中心とした構造調査が必要である.
本講演では,新たに得られた瀬戸内海側のデータを取り入れた中国・四国地方を横断する比抵抗構造解析の結果を示すとともに,同地方の広域の空間的な比抵抗構造の特徴について報告する.
これまでに京都大学防災研究所並びに鳥取大学工学部を中心とする研究グループは,山陰地方や四国地方外帯において電気比抵抗構造と地震活動の間に密接な関連がみられることを示してきた.例えば,山陰地方東部では(鳥取地震(1943年,M=7.2)の地震断層である吉岡・鹿野断層をはじめとして,鳥取県西部地震(2000年,M=7.3)等)顕著な地震の震源域およびそれらを含み日本海沿岸部に沿う帯状の地震活動域を横切る測線で深部地殻比抵抗構造調査を実施し,その結果,ほぼ東西方向に伸びる地震活動帯に沿って,高比抵抗領域である地震発生層の下,地殻深部に低比抵抗領域の存在を明らかにした.
しかしながら,尾崎他(2011) は,鳥取県中西部の地震(2002 年,Mj5.3)発生域の南北横断測線から推定された比抵抗モデルの特徴として地殻は全般的に高比抵抗であることを示した.この観測事実は,上述のこれまでに筆者を含む山陰地方の電気比抵抗を研究するグループが提唱してきたモデルと調和しない. さらに,塩崎他(2013)は,同地震発生域直近の2地点(志津および岡)の補観測により得られたデータの特徴から地殻深部に低比抵抗領域の存在を示唆した.これは前調査の観測データにはみられなかった新しい特徴である.僅か数km しか離れていない地点で探査曲線の形状に違いがみられることになる
すなわち,既存研究より東西方向に隣接する地域で指摘されたような山陰地方下の10 Ω m 以下の深部低比抵抗領域がみられず,ここでは山陰地方の深部低比抵抗領域は連続して存在しない可能性がある. 内陸地震が地震活動帯の直下の不均質構造に起因する局所的な応力集中により発生する(飯尾,2009)ならば,この不均質構造について,今後はさらなる面的な構造データの充実を図ることが必要であるととともに既存データをもとにした広域の比抵抗構造の空間的特徴を明らかにする必要がある.
一方,四国地方においては,これまで,主に中央構造線南側の外帯で同様の調査を行い,その予察的な結果から,外帯の上部地殻内に顕著な低比抵抗領域が存在すること,それが中央部・西部では無地震域と明瞭な関連がみられることが示唆された.また,西南日本弧を横断する調査研究に関して島弧横断「山陰-山陽-四国地方(鳥取東部-岡山-香川-徳島-室戸)」測線の構造解析から得られた四国地方東部並びに中国地方東部の2次元比抵抗構造断面図と佐藤ほか(2005) やIto et al.(2009) の求めた詳細な地震反射波断面を比較検討し,いずれの地域でも比抵抗構造と反射法探査により示された反射断面と地質構造解釈との間に明瞭な対応関係がみられる領域が存在することを確認した.
このような観測事実は,低比抵抗領域をもたらすもの,おそらくは地殻流体(水)が,地震発生に関して重要な役割を果たす可能性を示す.その地殻流体の供給源の一つの候補として沈み込むフィリピン海プレートの脱水反応に伴う水が想定されるが,西南日本弧では,北部地域(中国地方)において海洋プレートの沈み込みの様子がまだ完全にわかっていない.西南日本弧において海溝から背弧側までの全体像をつかむ上でも,中国・四国地方広域の深部比抵抗構造探査をもとにした定量的な議論の展開が望まれる.従って,中国地方から四国地方にかけての島弧横断構造断面の作成に関しては,フィリピン海プレートの北限位置の問題にこたえるために,瀬戸内海側の未測定地域を中心とした構造調査が必要である.
本講演では,新たに得られた瀬戸内海側のデータを取り入れた中国・四国地方を横断する比抵抗構造解析の結果を示すとともに,同地方の広域の空間的な比抵抗構造の特徴について報告する.