日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-EM 固体地球電磁気学

[S-EM36_30PO1] 電気伝導度・地殻活動電磁気学

2014年4月30日(水) 18:15 〜 19:30 3階ポスター会場 (3F)

コンビーナ:*山崎 健一(京都大学防災研究所)、多田 訓子(海洋研究開発機構)

18:15 〜 19:30

[SEM36-P11] 伊豆半島東部における地殻の上下変動と関連する地磁気全磁力変動

*笹岡 雅宏1小河 勉2 (1.気象庁地磁気観測所、2.東京大学地震研究所)

キーワード:伊豆半島東部, 地磁気全磁力, 地殻変動, 熱活動

伊豆半島東部地域では,群発地震活動・異常地殻活動に関連する地磁気変化を検出するために大学等研究機関により地磁気全磁力連続観測が行われている.この地域の群発地震は,主にマグマの貫入に伴って発生すると考えられている.マグマ貫入に伴う火山性の群発地震の場合は,岩石の持つ磁気の強さが岩石の温度や応力に応じて増減するため地磁気が変化する.気象庁地磁気観測所もこの地域で1990年代末から全磁力連続観測を実施していたが,2010~2012年にかけて,伊東市と熱海市の境界付近の御石ヶ沢から伊東市の市街地に近い玖須美元和田に連続観測点を移設し全磁力観測を継続した.玖須美元和田は,2009年12月に発生した伊豆半島東方沖地震の震央に近い.玖須美元和田での観測期間中,主なイベントとして2011年3月の東北地方太平洋沖地震に伴う地殻変動やその後7月と9月に伊豆半島東方沖で発生した小規模な群発地震がある.2010~2012年の調査期間中,地震活動については2011年が比較的活発であったのを除けば静穏であった.この期間中は,火山性の地震活動は無かったと判断されている.全磁力連続データについては外部磁場変動成分や年周変化等を除去する解析を施した上で利用した.
地殻の隆起に伴う圧力効果が全磁力変化に与える影響を確認するために,気象庁地磁気観測所及び東京大学地震研究所の全磁力連続データと国土地理院が公開しているGPS(汎地球測位システム)を用いて測定された測地高度の日々変動とを比較することにより,全磁力変動と地殻の上下変動との関連について調査した.2010~2012年の期間中は地殻の上下変動については季節的な変化が見られたが,2010年より2011年の方が上下変動の振幅は小さかった.全磁力については,2010年の地震活動が静穏な期間から2011年の地震活動が比較的活発な期間にかけて地殻の上下変動に対応した全磁力の増減,そして2011年の群発地震終息後10月頃に地殻の上下変動を伴わない全磁力の減少などが見られた.また,2012年の地震活動が静穏な期間では有意な全磁力変化は見られないことが分かった.結局,地殻の隆起に伴い期待されるピエゾ磁気変化は有意には観測されなかった.観測された全磁力変化の定性的な理解のため,2009年12月のマグマ貫入に伴う群発地震に関係する地下の熱変化が2011年10月頃まで継続し,地殻の上下変動に伴い地下の熱水が変位することにより地磁気全磁力の増減変動が2010~2011年にかけて観測され,2012年には地下の熱活動を伴わないため地殻が上下変動を示す時期に全磁力変化は見られなくなったと推論された.つまり地下の熱活動は,2010~2011年の期間で強化されることなく衰弱し,2011年10月以降の熱供給の途絶に伴う温度降下による帯磁をもって終結した.観測された顕著な全磁力変化については,地震(断層のずれ)と直接には関係なく,岩石の応力変化よりはむしろ地下の熱変化が原因で生じた結果である可能性が高いと考えられる.