日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-EM 固体地球電磁気学

[S-EM37_30AM1] 地磁気・古地磁気・岩石磁気

2014年4月30日(水) 09:00 〜 10:45 413 (4F)

コンビーナ:*櫻庭 中(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、望月 伸竜(熊本大学大学院先導機構)、座長:櫻庭 中(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、山本 裕二(高知大学 海洋コア総合研究センター)

09:00 〜 09:15

[SEM37-01] ウィルソン法による古地磁気強度測定

*福間 浩司1シェルバコフ ヴァレリィ2シェルバコワ ヴァーリャ2 (1.同志社大学理工学部、2.ロシア科学アカデミー・ボロック地球物理学研究所)

キーワード:古地磁気強度, ウィルソン法, テリエ法, 高温磁力計

古典的なテリエ法は未だ古地磁気強度測定のための最も信頼できる方法だが、非常に厳しい、まれにしか満たされない条件 ー 自然残留磁化 (NRM) はすべての温度区間で実験室の熱残留磁化 (TRM) に置き換えられる ー を必要とする。かなりの量の多磁区粒子が存在する場合、この条件は成立せず、アライ図に見られる曲線から誤った古地磁気強度が得られることになる。 非常に原始的(e.g., Folgheraiter [1899] )だが本質的にショー法にも使われているような単一ステップ加熱法は、テリエ法に要求される厳格な条件を回避することができる。ウィルソン法は単一ステップ加熱法の一種であり、約半世紀前に提案された(Wilson [1961, 1962])。NRM を高温で連続的に消磁して測定し、同様に実験室で与えた TRMを消磁して比較することで古地磁気強度が得られる。ウィルソン法がこれまでほとんど古地磁気強度測定に使われなかった理由は、磁化を高温で測定する必要があるためである。一方この方法は他の古地磁気強度法より非常に迅速である利点をもっている。自動化された高温磁力計を使用すれば、1-cc キューブを用いたウィルソン法による測定を1時間以内に完了することができる。 三宅島における1983年噴火(地球磁場:45.1 μT)の玄武岩とスコリアの27個の 1-cc キューブを用いてウィルソン法に基づく古地磁気強度測定を行った。 1-cc キューブをBorok地球物理研究所のOrion三成分試料振動型磁力計を用いて毎分約40°Cで空気中で加熱し,同時に高温で NRM3成分を測定した。磁化が初期値の1%未満に低下すると加熱を中止し,45 μTの磁場中で冷却して TRM を付与した。TRM も NRM と同様に連続的な熱消磁を行った。 測定したサンプルの85%で NRMーTRM 図上にきれいな直線を見た。アンブロッキング温度スペクトルの形状が NRM と TRM の間で本質的に変化していないことを示す。約半分のサンプルから予想される古地磁気強度を得た。隣り合うサンプルのテリエ法も期待される磁場強度を与えたが、幾つかのサンプルではうまくいかなかった。他の半分のサンプルでは、NRMーTRM の直線の傾きが1から大きくずれ,高いまたは低い値に外れた。このことは,熱変質(磁区の変質は含まない)が TRM 容量を増加させたり減少させたりしたが、アンブロッキング温度スペクトルの形状は変化しなかったことを意味する。このような熱変質は NRMーTRM 図では検出されないが、誤まった古地磁気強度を与える可能性がある。 ウィルソン法は、迅速かつ多磁区粒子を含むサンプルにも使えるが、熱変質は必ずしも NRMーTRM 図上の直線性から検出されないことに注意する必要があり,このことは他の単一ステップ加熱法にも当てはまる。