日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-EM 固体地球電磁気学

[S-EM37_30AM1] 地磁気・古地磁気・岩石磁気

2014年4月30日(水) 09:00 〜 10:45 413 (4F)

コンビーナ:*櫻庭 中(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、望月 伸竜(熊本大学大学院先導機構)、座長:櫻庭 中(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、山本 裕二(高知大学 海洋コア総合研究センター)

10:30 〜 10:45

[SEM37-P06_PG] 長野県南部,富草層群の古地磁気方位とテクトニックな意義

ポスター講演3分口頭発表枠

*酒向 和希1星 博幸1 (1.愛知教育大学)

キーワード:古地磁気, 富草層群, 中央構造線, 中新世, 岩石磁気, テクトニクス

本発表で筆者らは,長野県南部に分布する富草層群(前期中新世堆積岩)から新たに得られた古地磁気方位を報告し,本州中部の中央構造線(Median Tectonic Line; MTL)が前期中新世にどのような形状であったかについて議論する.
西南日本の帯状地体構造は,伊豆-小笠原弧と本州弧の衝突によって本州中部で屈曲している(関東対曲構造).衝突以前,MTLを含む帯状地体構造は直線状であったとする仮定や解釈が一般的である.その仮定や解釈の妥当性を定量的に検証するには,信頼できる古地磁気方位を関東対曲構造の各地で取得し,地域間で比較する必要がある.そこで筆者らは,衝突の影響が大きい(MTLが南北に近い)が既報方位の精度が高いとは言えない富草層群に注目し,古地磁気の再検討を行った.
富草層群の24サイトから堆積岩試料を採取した.段階消磁実験の結果,23サイトで信頼できる地点方位が決定された.等温残留磁化を用いた岩石磁気実験から,磁化を担う主要な鉱物はマグネタイトやマグヘマイトと推定される.これらの方位は逆転テストに合格することから,初生磁化の可能性が高い.層群平均方位は北寄りの偏角を示した.この方位は前期中新世の期待される方位(アジア大陸の北中国地塊の古地磁気データから計算)と区別できない.この事実から,富草地域では地層堆積以降にアジア大陸に対する有意な回転運動が起こっていないと考えられる.
富草層群の方位を周辺の4地域(三重県一志,愛知県知多半島,愛知県設楽,埼玉県秩父)と比較した.いずれも前期中新世堆積岩が見られ,MTL近傍に位置する地域である.富草の方位はMTLの一般走向(NNE)に対して約15°反時計回りに偏向している.周辺の4地域においても,誤差を考慮すると古地磁気方位とMTLの間に同様の関係が認められる.よって,古地磁気方位の観点からは,MTLは前期中新世(18-17 Ma頃)には直線状であったと考えられる.