日本地球惑星科学連合2014年大会

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ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-EM 固体地球電磁気学

[S-EM37_30PO1] 地磁気・古地磁気・岩石磁気

2014年4月30日(水) 18:15 〜 19:30 3階ポスター会場 (3F)

コンビーナ:*櫻庭 中(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、望月 伸竜(熊本大学大学院先導機構)

18:15 〜 19:30

[SEM37-P13] 伊能忠敬山島方位記に基づく19世紀初頭の日本の地磁気偏角の解析第8回報告

*辻本 元博1面谷 明俊2乾 隆明3宮内 敏4 (1.日本地図学会、2.山陰システム コンサルタント、3.松江市文化財審議員、4.伊能忠敬研究会)

キーワード:地磁気偏角, 伊能忠敬, 山島方位記, 基点, 学際

国宝「山島方位記」は伊能忠敬による1800年から1816年迄の北海道東岸から屋久島迄の推計約20万件の精度0°05′の陸上磁針測量方位角を記録した67巻でなる台帳である。1917年に既知の江戸(東京)深川伊能隠宅での1802年、1803年の測量方位角からの唯一の地磁気偏角の解析後に頓挫した解析作業を進めている。(1)「山島方位記」の解析で19世紀初頭に遡り日本を地磁気偏角データの過疎地域から正確な地磁気偏角データの集中地域に変え、北東アジアに新しいデータを提供する。解析済み地点数は178を超え、当時の日本列島の等偏角線の概要と西日本沿岸の15′毎の偏角の分布が現れ始めた。
(2) 1828~1832年の観測値で描かれたガウスとウエーバーの等偏角線世界地図(以下ガウス図という)と「山島方位記」から解析した日本列島の等偏角線を比べると概ね同じであるが、九州北部や対馬では相違が見られる。ガウス図の附帯表には日本での観測データは無い。ガウス図に記された東アジアの観測データは内陸の北京、東シベリア、オホーツク、カムチヤツカ等であり、山島方位記の解析結果から北海道東部南岸に地域的磁気異常と考えられる地磁気偏角が見られる。ガウス図の日本周辺の等偏角線は緯度5°、経度10°の500km四角での推定計算値で描かれている。それ故に山島方位記の解析値による補足が重要になる。今後はアメリカ海洋大気庁作成のAndrew Jackson et al Gufmlの等偏角線図(1800-1815)との照合が重要になる。
(3)地磁気学、地図学、郷土史横断の学際同時解析の手順と優位性 ①伊能図、伊能忠敬測量日記、現代の測量地図だけでなく新たに、郷土史料、郷土の古地図、明治初期の陸軍測量地図等を「山島方位記」の測量実施地点と測量対象地点に付された地名、位置説明記述、磁針測量方位角の照合に加えると正確な証拠を増やすことができる。②景観再現ソフトカシミールと電子国土地図で測量実施基点と測量対象地点の概略の緯度経度と真方位角とを把握する。③測量実施基点の詳細位置を複数の各測量対象への真方位角から「山島方位記」記載の磁針測量方位角を差し引いた平均値を偏角とする。④重要なことは異なる測量対象地点への全ての偏角の値がより近似になる位置を測量実施基点詳細位置としてエクセルの連続式で早く正確に求めることである。⑤現地で実景とGPS送受信機で測量実施基点詳細位置の緯度経度で秒単位以下の位置を確かめて計算しなおし、従来の研究よりも詳細且つ正確に伊能測量日の測量実施地点の分単位の地磁気偏角を求める。⑥磁気異常の地域や地点も見つけ、表現でき且つ郷土史で価値を有する現存しない建造物、大樹等を含む緯度経度秒単位以下の伊能忠敬測量実施基点詳細位置と秒単位の測量対象地点の位置が復元可能になる。