日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GC 固体地球化学

[S-GC56_30PM2] 固体地球化学・惑星化学

2014年4月30日(水) 16:15 〜 17:45 415 (4F)

コンビーナ:*下田 玄(産業技術総合研究所地質調査総合センター)、鈴木 勝彦(独立行政法人海洋研究開発機構・地球内部ダイナミクス領域)、山下 勝行(岡山大学大学院自然科学研究科)、座長:山下 勝行(岡山大学大学院自然科学研究科)、下田 玄(産業技術総合研究所地質調査総合センター)

17:00 〜 17:15

[SGC56-11] 独立成分分析を用いた太平洋および南鳥島レアアース泥の地球化学データ解析

*安川 和孝1高谷 雄太郎2大田 隼一郎1藤永 公一郎1中村 謙太郎1加藤 泰浩2岩森 光3 (1.東大・工・システム創成、2.東大・エネルギー・資源フロンティアセンター、3.海洋研究開発機構)

キーワード:深海底堆積物, レアアース, 独立成分分析

南東太平洋および中央北太平洋の深海底に広く分布する「レアアース泥」は,様々なハイテク産業に不可欠なレアアースを豊富に含み,新たな海底鉱物資源として有望視されている (Kato et al., 2011).2013年には,KR13-02航海により,日本最東端の南鳥島周辺海域でも海底面下10 m以浅にレアアース泥の存在が確認された (藤永ほか,2013; 鈴木ほか,2013).この南鳥島周辺海域のレアアース泥は,我が国の独自開発が可能な排他的経済水域 (EEZ) 内に存在し,かつ太平洋の他の海域で確認されていたレアアース泥の最高濃度 (2,230 ppm) を大きく上回る約6,600 ppmという極めて高い総レアアース濃度をもつことで,大きな注目を集めている.Kato et al. (2011) は,深海底堆積物中でレアアースの濃集に寄与している成分を推定するために,独立成分分析を用いてレアアース泥を含む太平洋の深海底堆積物の全岩化学組成データを解析した.その結果,生物源Caおよび生物源Siにそれぞれ富む傾向を示しレアアースを希釈する独立成分と,FeおよびAlにそれぞれ富む傾向を示しレアアースの濃集に関与する独立成分の計4成分が抽出された.このうち,レアアースが特に濃集する傾向を示したAlに富む独立成分については,主要元素組成の類似性から遠洋性粘土に通常含まれるphillipsiteが端成分と考えられた.しかしながら,文献値から想定されるphillipsite自身のレアアース濃度では観測される全岩堆積物中のレアアース濃度を説明できない.そのためKato et al. (2011) は,レアアースを濃集した別の鉱物がphillipsiteの凝集体に取り込まれることで,phillipsiteが堆積物中のレアアース濃集に寄与していると解釈した.その後,放射光を用いたXAFS測定およびμ-XRF元素マッピングにより,堆積物中でレアアースと直接結合しているのはapatiteであることが示された (戸田, 2013; Kashiwabara et al., 2014).こうした経緯をふまえ,本研究では,太平洋広域および南鳥島周辺EEZから得られた深海底堆積物の包括的な化学組成データセットに対し,独立成分分析を適用してその起源成分の再解析を実施した.また,レアアース濃集に寄与する独立成分をより正確に解釈するため,堆積物中のphillipsiteおよびapatiteそれぞれの単体がもつ化学組成をLA-ICP-MSで分析し,新たに端成分として用いた.本発表では,これらの結果について報告する.