日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GD 測地学

[S-GD22_1PO1] 重力・ジオイド

2014年5月1日(木) 18:15 〜 19:30 3階ポスター会場 (3F)

コンビーナ:*今西 祐一(東京大学地震研究所)、松本 晃治(国立天文台RISE月惑星探査検討室)

18:15 〜 19:30

[SGD22-P04] 警固断層帯南東部における高密度重力探査

*西島 潤1藤光 康宏1 (1.九州大学大学院工学研究院)

キーワード:高密度重力探査, 活断層, 重力異常

福岡市中心部を北西方向に縦断する警固断層帯は全長55kmで、過去の活動時期の違いから北西部と南東部に区分される(地震調査研究推進本部, 2007)。このうち北西部は2005年福岡県西方沖地震の震源域となった。一方陸域の南東部はマグニチュード7.2程度の地震が発生することが推定されており、30年以内の地震発生確率は0.3?6%と高くなっている。警固断層南東部において地震が生じた場合の地震被害を軽減することを目的として、文部科学省による「警固断層帯(南東部)における重点的な調査観測」が平成23年度に開始され3年間にわたり調査が行われている。本調査の一環で断層帯の詳細な位置・形状を把握することを目的とした高密重力探査を実施した。本研究では得られた重力異常とボーリング資料に基づき、警固断層帯南東部の密度構造モデルを作成した。

本調査では測定点間隔は50?150mとし、Scintrex社製CG-3+およびCG-5相対重力計を用いて3年間で721点の測定を行った。その際の測定点の位置測量は2周波型GPS受信機(TOPCON社製HIPER II)によるネットワーク型RTK法を用いた。重力基準点は九州大学伊都キャンパス内重力点でMicro-g LaCoste社製A-10絶対重力計を用いて測定した重力値を使用した。このデータに九州大学で過去に測定したデータおよび日本重力データベースDVD版(地質調査総合センター, 2013)のデータを併せて3008測定点のデータを用いて重力異常図を作成した。その際の補正密度はABIC最小化法(村田, 1990)により2.47g/cm3とし、地形補正は50mメッシュ地形データを用いて補正を行った。

得られた重力異常図には、今回ターゲットにしている断層による重力異常のほかに深部構造を反映した長波長の重力異常が含まれるため、この長波長成分を2次曲面で近似し分離して、比較的浅部の地下構造を反映した残差図を作成した。2次傾向面残差図より、これまでの測定で明らかになっていた南区井尻から春日市須玖北にかけての約2 kmの北西-南東方向の重力異常の急傾斜から南東方向に約1 km離れた春日市岡本付近及び春日公園の南西に重力異常の急傾斜(北東落ち)が存在することが判明した。また、急傾斜部分の東側には南西落ち重力異常の急傾斜が存在し、春日公園を中心とした地域はこれらの急傾斜部分に囲まれた低重力異常域になっていることが明らかになった。このような凹地状の構造は天神付近、井尻付近にも見られ、それぞれの凹地の間には重力基盤が浅くなっている部分があり、3つの独立した凹地が存在することが、重力異常から推定される。また、これらの凹地の中心は南東に行くに従い少しずつ東にずれている。現在推定されている警固断層の位置(中田・今泉, 2002)と重力異常の急傾斜部分を比較すると、井尻付近では東側の南西落ちの急傾斜部分にほぼ一致し、春日市岡本付近では西側の北東落ちの急傾斜部分に一致している。

警固断層沿いに北東方向に2km、南東方向に9.7kmの領域に対し、この2次傾向面残差に合うように3次元フォワードモデリングを行った。その際に本調査で得られたボーリング資料137本のデータを使用した。重力計算はGRAV3D ver. 3.0 (Li and Oldenburg, 1998)を用いて、地下の密度分布を推定した。この結果、断層位置は中田・今泉(2002)で推定されている位置とほぼ一致した。また、警固断層の東側に100m程度の破砕帯が推定された。