日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GL 地質学

[S-GL42_29AM1] 地球年代学・同位体地球科学

2014年4月29日(火) 09:00 〜 10:45 419 (4F)

コンビーナ:*田上 高広(京都大学大学院理学研究科)、佐野 有司(東京大学大気海洋研究所海洋地球システム研究系)、座長:田上 高広(京都大学大学院理学研究科)、佐野 有司(東京大学大気海洋研究所海洋地球システム研究系)

09:30 〜 09:45

[SGL42-02] 14C年代値に対する酸-アルカリ-酸洗浄法のアルカリ洗浄段階の影響評価

*渥美 晋1 (1.東京理科大学)

キーワード:放射性炭素年代測定法, 酸ーアルカリー酸前処理法, 三次元蛍光分析, フミン酸, 木炭試料

地球科学や考古学の分野では,14C年代測定に用いる炭化物の前処理に、酸-塩基-酸処理法(Acid-Base-Acid: ABA method or Acid-Alkali-Acid ; AAA method)が広く用いられている.しかし、酸-塩基-酸(Acid-Base-Acid: ABA)処理法は14C年代測定法における木炭試料の前処理の基本であるにもかかわらず、同法の処理条件についての化学的指標に基づく研究例は少ない.そこで本研究は,14C年代測定法の問題点として,従来,詳細は未解明であった前処理法による誤差の発生を明らかにすることを目的とする.発表者はこの目的の為に3種類の実験を行った.第一に年代値の再現性確認実験.第二に最適なアルカリ洗浄時間の確認実験.第三に洗浄に最適なアルカリ溶液の濃度の確認実験である.第一の結果:NaOH洗浄済みの試料の年代値群は,T=0.45(自由度3;5% 危険率: T >12.59)と高い収束性を示すのに対して,NaOH未洗浄試料の年代値はT=10.74(自由度4;5% 危険率: T > 9.49)と発散が大きく,NaOH未洗浄試料5試料の中で有意の差が現れた.第二の結果:目視によってアルカリ抽出終了と判断された後にも,三次元蛍光測定がNaOH溶液中にフミン酸を検出し,かつ、14C年代測定結果(渥美ほか, 2009)はフミン酸による影響を示している.さらに、これらの結果はアルカリ抽出終了判定に目視は不適切であり,かつ、三次元蛍光測定が溶存有機汚染物質の存在を監視する上で効果的であることを示唆している.第三の結果:ある考古遺跡中の同層準の3木炭試料を8つの別々の濃度のNaOH溶液で洗浄した試料の年代測定結果をχ2検定で評価した.その結果,1.2 mol/lで処理した試料間で最小値を示した.三次元蛍光測定の結果では2~1 mol/lのNaOH洗浄溶液中の腐植物質の抽出特性と0.5~0.001 mol/lの溶液の抽出特性との間に明確な傾向の差が出た.すなわち,0.5~0.001 mol/l NaOH溶液は低励起光波長領域の汚染の抽出効率が相対的に弱い.この現象が年代値の収束性の差を生んでいると考えられる.結論として、14C年代測定の前処理には1.0~1.5 mol/l NaOH溶液の使用を推奨する。これらの結果は,いずれも前処理の化学的条件の差異が引き起こすフミン酸の残留度の差が14C年代値に影響を及ぼすことを示している.