12:25 〜 12:40
[SGL42-P03_PG] 段階加熱による拡散実験と白雲母
ポスター講演3分口頭発表枠
キーワード:拡散実験, アルゴン, 閉止温度, 段階加熱, 白雲母
一般に結晶水を含む鉱物のアルゴンの拡散パラメーターを決定するとき真空中での段階加熱実験は加熱中に結晶格子の破壊が起きるため正確な値が得られず不適当であるとされてきた. 以前報告したレーザー段階加熱による単結晶黒雲母の結果では冷却速度を考慮すると実際的な値と変わらない範囲に収まることがわかっている. 一方, 真空下での白雲母の拡散実験の結果は従来のデータとの不一致が大きく実用的な適用が難しいと考えられた. 白雲母のレーザー加熱による実験での大きな問題は脱水反応もしくは構造相転移による脱ガスが600oC以上で急激に進行し, 拡散現象では解釈できなくなる要素が大きい. 真空中の実験の場合, 拡散パラメーターを見積もるArrhenius実験では脱水の影響が顕著でない600oC以下でのデータを用いたが, 拡散するガス量が少なく誤差が大きい問題があった. ほとんどの場合, 活性化温度は30-40 kcal/moleの領域であり, その値から得られる閉止温度は300oCを超える値は少ない結果となった. むしろ400oC以上の高い温度は温度領域を600-700oCにして急激な拡散を起こす状態でのデータから得られた. 近年, 熱水環境下での実験で活性化エネルギーは63 kcal/mole, 冷却速度, 拡散半径に依存するが閉止温度は, 400oCと見積もられている. (Harrison et al., 2009). このデータは600-700oCでの値を使用し, 構造的な変化が起きていないという保証はない. 熱水環境下で仮に結晶格子が安定的に存在したとしても同じ温度領域で構造相転移がおきるとすれば拡散パラメーターは独立に分離できない. 単に数学的側面からはArrhenius plotで大きな活性化エネルギーEもしくは周波数因子D0/a2を得るには急な傾きすなわち急激な脱ガスが必要となる. これは実は拡散においてゆっくりとした振る舞い(E, D0/a2が大きい)をすることとは矛盾する領域で拡散現象を見ていることになる. 一方, 野外においては白雲母が高い閉止温度を示している証拠もみつかっている. すなわち単に実験室において条件をみたすだけでなく, 野外での条件に基づく考察を平行して行う必要があり, 白雲母の閉止温度の意味を再考する必要がある.