日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GL 地質学

[S-GL44_2PM1] 上総層群における下部ー中部更新統境界

2014年5月2日(金) 14:15 〜 16:00 421 (4F)

コンビーナ:*岡田 誠(茨城大学理学部理学科)、座長:里口 保文(滋賀県立琵琶湖博物館)

15:30 〜 15:45

[SGL44-06] 下北半島沖海底コアC9001Cに挟在する更新世テフラ群の同定

*長谷川 健1菅谷 真奈美1岡田 誠1望月 伸竜2藤井 哲夢2渋谷 秀敏2 (1.茨城大学理学部、2.熊本大学)

キーワード:下北半島沖, 海底コア, 更新世, テフラ, ちきゅう, 火山ガラス

地球深部探査船「ちきゅう」が2005年から約2年間行った慣熟航海により下北半島東方沖で海底コア(C9001)が得られた.本コアはMatuyama-Brunhes境界付近まで遡り,日本近海における中~上部更新統を連続的かつ長期にカバーするきわめて重要なコアである.特にC9001C孔(全長386 m)では,酸素同位体比分析が行われ,LR04標準カーブとの対比による連続的なモデル年代(LR04年代)が作成されている(Domitsu et al.,2011).我々は,同コア中のテフラを採取し,岩石学的検討により複数層準においてテフラ同定ができたので報告する. 本コアは全体的にオリーブ黒色~オリーブ灰色の珪藻質シルト質粘土からなる.この単調な岩相中に,しばしば数mm~数cmの厚さの明色でガラス質なテフラ層が挟在する.我々は,採取試料のうち,20~150 mbsf(LR04年代=約30~240ka)について,比較的厚く粗粒なテフラのみを対象に,火山ガラスの化学組成分析や鉱物組み合わせなどの岩石学的特徴の記載を行った.さらに,テフラの給源となりうる北海道の火山を調査し,給源近傍の噴出物試料も採取・分析した.既存のテフラデータベース(町田・新井,2003;青木・町田,2006,など)に加え,これら近傍試料も用いることで,より正確なテフラ同定を試みた. 従来,本コアからはSpfa-1(支笏第1)とAso-4(阿蘇4)が見出されていたが(Domitsu et al.,2011),今回新たに,19.6mbsf からTo-Of(BP1)(十和田-大不動(ビスケット1)),24.8mbsfからTo-GP(十和田-合同),25.5mbsfからKo-i(北海道駒ケ岳-i),61.4mbsfからToya(洞爺),73.9 mbsf からAso-3(阿蘇3),115.6mbsfからMb-1(紋別1),そして145.9 mbsfからTn-C(田名部C),と考えられるテフラを見出した. 19.6mbsf のテフラは層厚約6cmで中粒砂サイズの結晶ガラス質火山灰である.重鉱物組み合わせ(Cpx, Opx)およびガラス組成(SiO2=77.5%, K2O=1.2%:100%換算(以下同様))からみて,To-Of(或いは直下の降下軽石であるTo-BP1)に対比される.24.8mbsfのテフラは層厚約3cmで中粒砂サイズのガラス結晶質火山灰である.重鉱物組み合わせ(Cpx, Opx)およびガラス組成(SiO2=75.4%, K2O=1.1%)とTo-Ofとの層序関係から,To-GPに対比される.25.5mbsfのテフラは層厚約5 mmで細粒砂サイズのガラス質火山灰で,珪藻質シルト中にパッチ状に存在する.重鉱物は含まれないが,ガラスの化学組成(SiO2=76.2%, K2O=2.1%)と層序から,Ko-iに対比される可能性がある.61.4mbsfのテフラは層厚約1.5cmで細粒砂サイズのガラス質火山灰である.重鉱物はほとんど含まれないがOpxが確認できる.火山ガラスの化学組成(SiO2=79.0%, K2O=2.7%)と層序からToyaに対比される.73.9 mbsfのテフラは層厚約2cmで中細砂サイズのガラス結晶質火山灰である.重鉱物組み合わせ(Cpx, Opx)と高カリウムのガラス組成(SiO2=70.3%, K2O=4.6%)および層準からAso-3に対比される.115.6mbsfのテフラは,層厚約4cmで中細砂サイズのガラス結晶質火山灰である.重鉱物には輝石のほか黒雲母・角閃石を含むことと,ガラス組成(SiO2=78.1%, K2O=3.9%)および層序からMb-1(奥村,1991,第四紀研究)に対比される可能性がある.145.9 mbsf のテフラは層厚約20cmで中~粗細砂サイズのガラス結晶質火山灰である.厚く粗粒な岩相と重鉱物組み合わせ(Cpx, Opx)およびガラス組成(SiO2=78.4%, K2O=1.5%),層準から恐火山起源のTn-Cに対比される. LR04年代に基づいて対比結果の意義を考察する.To-Ofは,これまでMIS3(>32ka)とされていたが,MIS2初期のテフラ(<29ka)と判断できる.Aso-3は,下北沖で見つかったことにより分布域と噴出量の見直しが求められる上,MIS5或いは5/6境界(130ka)とされていた従来の年代よりも古く,MIS6末期と判断できる.これまでMIS8とされ,詳細な年代は不明であったTn-Cは,今回MIS7に対比され,240kaよりも新しい年代となる.まだ対比に検討の余地があるKo-iやMb-1の他,採取したが同定作業を行っていない多数のテフラについても現在検討を進めている.