日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

インターナショナルセッション(口頭発表)

セッション記号 S (固体地球科学) » S-IT 地球内部科学・地球惑星テクトニクス

[S-IT05_28AM2] Cause and evolution of plate tectonics: Advances in understanding oceanic plate-continental systems

2014年4月28日(月) 11:00 〜 12:45 315 (3F)

コンビーナ:*Becker Thorsten(Department of Earth Sciences, University of Southern California)、Hernlund John(Earth-Life Science Institute)、中川 貴司(海洋研究開発機構地球内部ダイナミクス領域)、座長:Becker Thorsten(Department of Earth Sciences, University of Southern California)

11:15 〜 11:30

[SIT05-09] 地球と金星のレオロジー構造における違いとテクトニクス

*東 真太郎1片山 郁夫1中久喜 伴益1 (1.広島大学理学研究科地球惑星システム学専攻)

キーワード:斜長石, かんらん石, 金星, レオロジー, プレートテクトニクス

これまで金星は密度、質量、体積、太陽の距離などから地球とよく似た地球型惑星だと考えられていた。しかし現在では、Magellan missionによって、金星は温度、水、大気、地形、そして生命において地球とはかなり異なり、さらにプレートテクトニクスが働いていないことが明らかにされ、同じ地球型惑星でも金星は全く違う進化を辿ってきたと考えられている。プレートテクトニクスは地球において最も重要な物質循環の1つである。そのため、このプレートテクトニクスの欠如が地球と金星の違いを生み出した1つの要因であると推察される。プレートテクトニクスを考える上で重要なものとして、惑星内部の強度や変形を考察するレオロジーが挙げられる。なぜなら岩石のレオロジーが惑星内部の強度や変形メカニズムを支配し、テクトニクスに大きな影響を与えるからである。先行研究では、金星のレオロジー層構造は地殻を構成していると考えられるダイアベースの流動則を室内実験から求め、金星内部の温度・圧力に外挿することによって考察されてきた。それらによると金星の下部地殻と上部マントルには大きい強度コントラストが期待され、デカップリングを起こしている可能性が示唆されている。しかし、ケイ酸塩鉱物のような強い化学結合を持つ鉱物において、比較的低温ではpower-lawタイプの流動則は適応できず、パイレスメカニズムが支配的になることが知られている。本研究では、金星のモホにおいて強度コントラストの有無を変形実験によって明らかにし、その強度コントラストの有無がどのように金星のテクトニクスに影響を与えるかを、1次元と2次元の数値シミュレーションから考察する。変形実験を行った目的は、流動則からの外挿ではなく、改良型Griggs変形試験機を用い、斜長石とオリビンの2相系で変形実験を行い、強度比を直接決定することである。変形実験の条件は T=600-1000oC, P=2GPa て?ある。また金星の表面温度T=470 °Cであることから、かなりドライな惑星であると考えられ、無水条件で実験を行った。無水条件における変形実験により、全ての温度条件でオリビンが斜長石よりも強度が大きいことが確認された。これはpower-law creepの外挿からでは起こりえないことから、オリビン及び、斜長石の変形メカニズムが低温では Peierlsメカニズムが支配的になっていることが示唆される。この無水実験より得られた強度比から金星内部のレオロジー構造を推察し、さらに地球の海洋リソスフェアとの違いも考察した。まず地球の場合、海洋リソスフェアのレオロジー層構造は Byerlee's lawとpower-law creepによってよく制約されている。それによると、海洋リソスフェアのモホ面はまだ脆性領域であり、モホにおいて強度のコントラストは無いと考えられる。 そのため、地殻と上部マントルはよくカップリングし、一緒に地球深部へと沈み込むことができる。一方、本研究の実験結果から金星のレオロジー層構造を考えると、モホに大きい強度コントラストが期待できる結果となった。下部地殻と上部マントルの強度コントラストが大きいとデカップリングを起こす可能性が考えられる。この弱い下部地殻によって起こるデカップリングが強い上部マントルの変形から地殻を切り離し、地殻の水平移動を妨げていることが期待される。さらに強度の小さい物質は強度の大きい物質に沈み込むことは困難であることが予想されるため、リソスフェアの地殻の部分はマントル中に沈み込むことが出来ない。また一次元の数値計算からも、モホにおいて大きい強度差があればあるほど、下面の速度に対して、表面速度は遅くなることがわかった。それゆえ、モホに大きい強度差があるとき、地殻の部分はマントルの変形に巻き込まれそうにない。実際2次元のシミュレーションからも、地殻とマントルに強度差がある場合、地殻の部分は沈み込むことができないことがわかった。以上のことから、この地殻とマントルのデカップリングが金星のプレートテクトニクスを阻止した1つの要因ではないかと考察される。