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[SIT38-03] 遅い陥入による粉体のアコースティック・エミッション統計と変形則
キーワード:アコースティック・エミッション, 準静的抵抗力, 粉体, べき則
粉体の挙動は様々な地球物理現象に関係することが知られているが,その挙動については未解決な問題が多く残されている.本研究では,固体球を粉体層に低速で陥入させた際の粉体層の応答を実験的に調べた.特に,固体球にかかる抵抗力とその陥入時に発生するアコースティック・エミッション信号に注目し,それらの同時計測を行った.用いた実験系は,我々の以前の研究 [1,2] に用いたものと基本的には同様のものとなる.これらの先行研究では,抵抗力と容器壁を伝達する圧力成分の関係について議論したが,本研究では陥入に伴うミクロスコピックな変形に注目するためにアコースティック・エミッション信号の計測を行った.用いた粉体粒子はガラス・ビーズ(代表粒径:0.4?2 mm)で,陥入する固体球の直径は10 -40 mmの範囲で変化させた.アコースティック・エミッション・センサー(NF AE-9913)を粉体層に埋め込み,その後に,万能試験機(Shimadzu AG-100Nx)を用いて固体球をゆっくりと粉体層に押し込んだ.固体球にかかる抵抗力が陥入速度に依存しない(準静的領域)ように,陥入速度は十分小さい範囲にとられた(1 mm/sのオーダー).この実験系を用いて粉体層における低速陥入による抵抗力とアコースティック・エミッション統計の詳細を実験的に調べ,特にそれらの従う「べき則」について見つかったいくつかの知見について報告する[3]. まず,計測された抵抗力が陥入深さに対してべき的に依存することが明らかになった.本実験と先行研究の結果を組み合わせて考えると,このべき則の指数は粉体層のサイズすなわち容器サイズに依存することが明らかになった.得られた実験の傾向より,容器壁が小さい場合はより容器壁の影響が大きく出ることがわかり,このことは粉体の作る応力鎖による効果と考えられる. また,計測されたアコースティック・エミッション信号は短いバースト型イベントから構成されていることがデータから明らかになった.更に,各バースト・イベントの最大振幅をイベント・サイズとして,アコースティック・エミッション・イベントのサイズ分布を求めると,べき分布となることが分かった.ベキ分布は地震統計のグーテンベルグ・リヒター則と似ているが,アコースティック・エミッション・イベントの統計では,べき分布の特性指数が粉体粒子の粒径に依存して系統的に変化することが実験より明らかになった.具体的には,粒径が小さくなるほどべき指数は大きくなった.このことは小さな粒径で構成される粉体層が塑性的に振る舞い,大きな粒子による粉体層が脆性的であることを示唆している.更に本実験の結果は,小粒子による粉体層がより散逸的であることとも整合的であった.より詳細に破壊のモードを調べるためにはアコースティック・エミッションと同時に磁気放射の計測も必要となるが,本研究では,とくにアコースティック・エミッションのみに注目した.本実験結果から地球物理現象に関わる現象のレオロジー特性を直接議論することは簡単ではないが,本研究により地球物理現象の多くと関係する(連続体とは異なる)粉体の特殊性の一部が明らかにされた.[1] H. Katsuragi, Material, preparation, and cycle dependence of pressure behavior in a slowly plunged granular column, Chem. Eng. Sci., 76, 165-172 (2012). [2] H. Katsuragi, Nonlinear wall pressure of a plunged granular column, Phys. Rev. E, 85, 021301:1-5 (2012).[3] K. Matsuyama and H. Katsuragi, Power law statistics of force and acoustic emission from a slowly penetrated granular bed, Nonlin. Processes Geophys., 21, 1-8 (2014).