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[SIT38-12] マントル物質の拡散クリープ下での粒界すべりと粒子回転の定量化
キーワード:粒子回転, 粒界すべり, CPO, クリープ
地震学的観測より、上部マントルにおいて地震波速度の異方性の存在が明らかになっている(Tanimoto and Anderson 1984) 。これは、マントル流動による、かんらん石の結晶格子選択配向(CPO)が原因であるとされている。一般的に、CPOは転位すべりに伴う粒子回転によって発達すると考えられている。しかし最近、我々はこれまでCPOが発達しないと考えられてきた拡散クリープ領域において、結晶選択配向(CPO)の発達を報告した(Miyazaki et al. 2013)。しかしながら、CPOの発達メカニズムは明らかにされていない。そこで、拡散クリープ領域におけるCPO発達メカニズムを微細組織の観察によって解明することを目的とし、大気圧下における高温圧縮変形試験を行った。本研究では、真空焼結法によって、円柱状の多結晶体であるフォルステライト+ダイオプサイド2相系 (Fo80Di20 vol. %)とフォルステライト+エンスタタイト2相系(Fo65En35 vol. %)を合成し、これらを試料とした。変形実験前に試料の側面を鏡面研磨し、その面にマーカーとなる溝を圧縮軸に平行となるように作成した。この試料の加工は収束イオンビームを用いて行った。大気圧下における高温圧縮変形試験は、温度1300℃、歪速度10-5~10-4 s-1の条件で行った。変形実験後に、電界放出型走査型電子顕微鏡(JEOL 6500F、東京大学ナノ工学研究センター)を用いて変形に伴うマーカーの移動を観察した。このマーカーの観察から、変形による粒子の移動を調べる。試料表面のマーカー観察により、マーカーのオフセットを確認した。これは粒界すべりが生じた証拠となる。また、粒内のマーカーに歪が見られないことから、粒内変形はないと考えられる。さらに我々は、個々の粒子の回転を確認し、回転角度を定量化した。Fo80Di20の場合、歪3 %、7 %、14 %のとき粒子の平均回転角度はそれぞれ1.2°、3.9°、6.5°となった。この結果から、歪量の増加に伴い回転量も増加することがわかる。さらに、Fo80Di20の方がFo65En35よりも回転量が大きいことが明らかになった。これは、Fo粒子の形状が原因であると考えられる。Fo80Di20の場合Fo粒子は異方的である。一方、Fo65En35のFo粒子は等方的である。異方的な粒子は結晶学的に制御された結果、長く直線的な粒界を持ったと考えられる。我々は、粒界すべりクリープ下における粒子回転のモデル(Beere 1978)を拡張し、すべりが容易であると考えられる長く直線的な粒界の存在によって粒子の回転が生じCPOが発達すると仮定している。本研究の結果は、我々のCPO発達モデルを支持するものと思われる。