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[SIT38-P09] Griggs型固体圧式変形試験機の差応力測定値の較正
キーワード:レオロジー, 変形実験, 固体圧試験機の較正
岩石や鉱物の力学的性質は地球内部の温度と圧力を再現した変形実験を行うことによって定量的に調べることができる.岩石変形試験機には,使用する圧媒体の違いから固体圧式変形試験機,油圧式変形試験機,ガス圧式変形試験機などがある(例えば,Tullis and Tullis, 1986).油圧試験機は高温での油の変質を防ぐため,500℃以下に実験が制限される.固体圧試験機は柔らかい固体の圧媒体を用いているため,長期間安全かつ安定的に高封圧を得られるが,圧媒体と試料や載荷ピストンの間に生じる摩擦のため応力の測定精度は低い(例えば,Tullis and Tullis, 1986).ガス圧試験機はロードセルが圧力容器の中にあるため,力学データの精度が最も高いが,国内では高圧ガスの規制法規のため封圧200 MPa以下に制限されている.従って,地殻深部や最上部マントルを構成する岩石鉱物の塑性流動変形に必要な高温・高圧条件を得るためには固体圧試験機が必要となる.
近年,固体圧試験機とガス圧試験機を用いて封圧,温度,歪速度条件を等しくした金属試料の軸圧縮実験を行い,差応力測定値を比較することで固体圧試験機の較正則が示された(Holyoke and Kronenberg, 2010).この較正則によって,固体圧試験機を用いて定常領域の差応力を±30 MPaの誤差で求めることができるようになった.しかし,ガス圧試験機と固体圧試験機の定常領域に当たる歪5%の応力値のみを比較することでこの較正則を求めているため,弾性領域や降伏領域,降伏後の歪硬化や歪軟化といった挙動を再現することはできない.岩石や鉱物の詳細な粘弾性挙動を明らかにするためには,あらゆる変形挙動に適用できる固体圧試験機の差応力測定値の較正則が必要である.
本研究では,東北大学所有のGriggs型固体圧式変形試験機(固体塩アセンブリ)を用いてニッケルの軸圧縮実験を行い,差応力の測定を行った.試料として用いたニッケルはHolyoke,Kronenberg両博士に提供して頂いた.実験は,封圧300 MPa及び1200 MPa,温度600 ℃,700 ℃,800 ℃,歪速度2×10-4 /s,2×10-5 /s,2×10-6 /sの条件で行った.その結果,先行実験(Holyoke and Kronenberg, 2010)と封圧の等しい差応力測定結果は先行実験の結果と±30 MPa程度の誤差でよく一致していた.しかし,封圧を増加させると差応力測定値が大きくなる傾向があった.得られたニッケルの力学データを嶋本(1987)の粘弾性構成則に基づいて解析し,様々な温度・歪における挙動を規格化したマスターカーブを作成した.Holyoke and Kronenberg (2010) のガス圧試験機によるニッケルの力学データについても同様に解析し,マスターカーブを作成した.固体圧試験機とガス圧試験機で同じニッケルを試料として用いており,温度,歪条件を規格化しているため固体圧試験機とガス圧試験機のマスターカーブの差は試験機の本質的な違いによるものと考えられる.固体圧試験機とガス圧試験機のマスターカーブの差から固体圧試験機の差応力測定値の較正則を導出した.較正則を固体圧試験機によって得られたニッケルの差応力測定値に適用したところ,ガス圧試験機の差応力測定値を定常領域だけでなく,弾性領域や降伏領域も±30 MPa程度の誤差で再現することができた.炭酸塩岩の力学データにも較正則を適用したところ,誤差は±70 MPaと大きかった.また,ガス圧試験機と異なり固体圧試験機は封圧を上昇するほど差応力測定値が大きくなる傾向がある.封圧が固体圧試験機の差応力測定値に与える効果を調べて,較正則に組み入れる必要がある.
近年,固体圧試験機とガス圧試験機を用いて封圧,温度,歪速度条件を等しくした金属試料の軸圧縮実験を行い,差応力測定値を比較することで固体圧試験機の較正則が示された(Holyoke and Kronenberg, 2010).この較正則によって,固体圧試験機を用いて定常領域の差応力を±30 MPaの誤差で求めることができるようになった.しかし,ガス圧試験機と固体圧試験機の定常領域に当たる歪5%の応力値のみを比較することでこの較正則を求めているため,弾性領域や降伏領域,降伏後の歪硬化や歪軟化といった挙動を再現することはできない.岩石や鉱物の詳細な粘弾性挙動を明らかにするためには,あらゆる変形挙動に適用できる固体圧試験機の差応力測定値の較正則が必要である.
本研究では,東北大学所有のGriggs型固体圧式変形試験機(固体塩アセンブリ)を用いてニッケルの軸圧縮実験を行い,差応力の測定を行った.試料として用いたニッケルはHolyoke,Kronenberg両博士に提供して頂いた.実験は,封圧300 MPa及び1200 MPa,温度600 ℃,700 ℃,800 ℃,歪速度2×10-4 /s,2×10-5 /s,2×10-6 /sの条件で行った.その結果,先行実験(Holyoke and Kronenberg, 2010)と封圧の等しい差応力測定結果は先行実験の結果と±30 MPa程度の誤差でよく一致していた.しかし,封圧を増加させると差応力測定値が大きくなる傾向があった.得られたニッケルの力学データを嶋本(1987)の粘弾性構成則に基づいて解析し,様々な温度・歪における挙動を規格化したマスターカーブを作成した.Holyoke and Kronenberg (2010) のガス圧試験機によるニッケルの力学データについても同様に解析し,マスターカーブを作成した.固体圧試験機とガス圧試験機で同じニッケルを試料として用いており,温度,歪条件を規格化しているため固体圧試験機とガス圧試験機のマスターカーブの差は試験機の本質的な違いによるものと考えられる.固体圧試験機とガス圧試験機のマスターカーブの差から固体圧試験機の差応力測定値の較正則を導出した.較正則を固体圧試験機によって得られたニッケルの差応力測定値に適用したところ,ガス圧試験機の差応力測定値を定常領域だけでなく,弾性領域や降伏領域も±30 MPa程度の誤差で再現することができた.炭酸塩岩の力学データにも較正則を適用したところ,誤差は±70 MPaと大きかった.また,ガス圧試験機と異なり固体圧試験機は封圧を上昇するほど差応力測定値が大きくなる傾向がある.封圧が固体圧試験機の差応力測定値に与える効果を調べて,較正則に組み入れる必要がある.