日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-IT 地球内部科学・地球惑星テクトニクス

[S-IT39_2AM1] 地球深部ダイナミクス:プレート・マントル・核の相互作用

2014年5月2日(金) 09:00 〜 10:45 416 (4F)

コンビーナ:*綿田 辰吾(東京大学地震研究所海半球観測研究センター)、境 毅(愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター)、中川 貴司(海洋研究開発機構地球内部ダイナミクス領域)、座長:坂巻 竜也(東北大学大学院理学研究科)、市川 浩樹(愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター)

09:00 〜 09:15

[SIT39-01] マックスウェル粘弾性体の力学方程式の新しい定式化

*松野 太郎1 (1.海洋研究開発機構)

キーワード:マックスウェル粘弾性体, 粘弾性体力学, マントル対流, プレート・マントル結合シミュレーション

岩石からなる地殻・マントルやグリーンランド・南極に存在する氷床は普通の意味で固体であるにもかかわらず、長い時間スケールでは流動することが知られている。そして、マントル対流などに対しては粘性流体とみなしてNavier-Stokes方程式を基に数値シミュレ-ションが行われている。氷床流動に関しても氷は粘性流体として扱われ、ただ粘性力と流れの関係が非ニュートン的とされている。 一方、両方の性質を考慮しなくてはならない問題として、氷期終了後の地殻上昇の問題では、応力とひずみの関係を表す構成方程式として、Maxwellによって提唱された短い時間では弾性体、長い時間では粘性流体となるような形の式を用いて議論されてきた。しかし、この方程式を用いた議論は、伝統的に時間に関してラプラス変換して半ば解析的に扱われてきた。これを、ちょうど大気や海洋の大循環の数値シミュレーションのように、時間空間差分化して解こうとするとうまくいかない。 そのような背景のもと、マントル対流のシミュレーションで、地表近くの弾性体としてのプレートの効果を取り込むことは大変困難であり、うまくできていない。氷床流動でも、西南極大陸で岩盤を離れて海水の上に張り出した氷棚を粘性流体として扱うのには疑問がある。「正しい」粘弾性体力学を基に両方の性質を持ち、時間空間差分化した数値シミュレーションを可能とする方程式の形をさぐる。 マックスウェルの構成方程式は、ばねとダッシュポットが直列につながれた系の示す力と変位(のび)の関係をモデルとして導かれた。この系で、ダッシュポットの部分は粘性を表すと考えられ模式図にもそのように描かれる。しかし、系の力は一つだから、ばねの伸びだけできまり、ダッシュポットの部分はばねの伸び縮みの原点の位置の時間的変化を表す式と考えてもかまわない。その結果、力が等しいという関係式はばねの原点(自然長は不変)がばねの伸び縮みによって引きずられて変化する事を表す式と読み替えられる。これを連続体における力と歪の関係に置き換えると、弾性歪を定義する原点の位置(のひずみ)即ち塑性歪の時間変化が弾性歪によって生じる事を示す式となる。即ち弾性歪が時とともに塑性歪に転化すると言う事を意味する。この時定数がマックスウェル緩和時間になる。 こう考えると、日常経験的にも知られている「弾性ひずみが時とともに塑性ひずみに転化する」という事を物理の法則とし、これと弾性体に対する運動方程式とを組み合わせて基礎方程式系とする事が適切と思われる。このことは従来の「正しい」マックスウェル構成方程式と矛盾せず、差分法による数値積分を可能にする。即ち、弾性波の伝搬より十分ゆっくりの現象に対しては(静的)準弾性平衡を保ちつつ、「弾性ひずみ緩和」によって生じるゆっくりした変化を扱うのである。 マントル対流を粘性流体として扱いつつ、地球表面近くのプレートの弾性を取り入れようとする試みが、過去20年ほど現れてきたが、著者が調べた範囲では工学のレオロジーで使われた方程式系をそのまま持ってきたもので正しいものではない。