14:00 〜 15:15
[SIT39-P05] 全マントルP波鉛直異方性トモグラフィー
キーワード:トモグラフィー, マントル, 異方性トモグラフィー
1. はじめに
地震波の異方性を研究する際には,ほとんどの場合において六方対称の異方性(即ち,transverse isotropy)が仮定される.その対称軸は,水平面内(即ち,方位異方性)又は鉛直方向(即ち,radial anisotropy)にとることが多い.
マントル内の地震波の異方性は,かんらん石などの造岩鉱物のもつ結晶方位異方性,及び応力のかかることによるそれらの選択配向(lattice preferred orientation, LPO)によるものと考えられる (e.g., Zhang & Karato, 1995; Tommasi et al., 2000; Kaminski & Ribe, 2001).地震波の異方性と地球内部物質の状態との関係が分かれば,異方性を観測することで地球内部の構造とダイナミクスを解き明かすことができる(Silver, 1996).地震波の方位異方性に関する研究は数多く行われている. 一方, 異方性は鉛直方向のみに存在すると仮定した鉛直異方性に関する研究は, P波走時データを用いてWang & Zhao (2013)により東北地方と九州地方で行われた.
本研究では全マントルの鉛直異方性を考慮に入れたグローバルトモグラフィーを実施し, マントルダイナミクスの研究を試みた.
2.データ・手法
国際地震センター(ISC)のEHBカタログから山本・趙 (2010)によって選択された6765点の観測点で観測された12,657個の地震を解析に用いた.約140万個のP, pP, PP, PcPとPdiff波の走時データをインバージョンに使用した.
解析に用いた手法は, Wang & Zhao (2013)の鉛直異方性トモグラフィーの手法をZhao et al. (2013) によるグローバルトモグラフィーの手法に組み込んだものである. 三次元等方速度構造を表す格子点の間隔は2度(約220 km)であり, 三次元異方性構造を表す格子点の間隔は10度(約1100 km)である.
3.結果
鉛直異方性を考慮に入れたトモグラフィーを実施した結果, 等方成分のみを考慮したモデルに比べて最終的なroot-mean-square (RMS)走時残差は減少した. 上部マントルには環太平洋に低速度異常が, 安定大陸の下には著しい高速度異常が見られた. また, 南太平洋とアフリカの下には核―マントル境界(CMB) から地表まで連続した低速度異常が見られるなど等方成分については先行研究で行われた等方トモグラフィーの結果と非常に調和的であった. 異方性成分は, 太平洋スーパープルームなどでは鉛直方向の速度が水平方向より卓越している領域が見られ, マントル中の鉛直方向の運動を表していると考えられる.
参考文献
Kaminski & Ribe (2001) A kinematic model for recrystallization and texture development in olivine polycrystals. Earth Planet. Sci. Lett. 189, 253?267.
Silver (1996) Seismic anisotropy beneath the continents: Probing the depths of geology. Ann. Rev. Earth Planet. Sci. 24, 385?432.
Tommasi, Mainprice, Canova & Chastel (2000) Viscoplastic selfconsistent and equilibrium-based modeling of olivine lattice preferred orientations: Implications for the upper mantle seismic anisotropy. J. Geophys. Res. 105, 7893?7908.
Wang & Zhao (2013) P-wave tomography for 3-D radial and azimuthal anisotropy of Tohoku and Kyushu subduction zones. Geophys. J. Int. 193, 1161-1181.
山本芳裕, 趙大鵬 (2010), 全マントルP波トモグラフィー -Tohoku モデル-, 月刊地球, 32, 312-324.
Zhang & Karato (1995) Lattice preferred orientation of olivine aggregates deformed in simple shear. Nature 375, 774?777.
Zhao, D., Y. Yamamoto, T. Yanada (2013) Global mantle heterogeneity and its influence on teleseismic regional tomography. Gondwana Res. 23, 595-616.
地震波の異方性を研究する際には,ほとんどの場合において六方対称の異方性(即ち,transverse isotropy)が仮定される.その対称軸は,水平面内(即ち,方位異方性)又は鉛直方向(即ち,radial anisotropy)にとることが多い.
マントル内の地震波の異方性は,かんらん石などの造岩鉱物のもつ結晶方位異方性,及び応力のかかることによるそれらの選択配向(lattice preferred orientation, LPO)によるものと考えられる (e.g., Zhang & Karato, 1995; Tommasi et al., 2000; Kaminski & Ribe, 2001).地震波の異方性と地球内部物質の状態との関係が分かれば,異方性を観測することで地球内部の構造とダイナミクスを解き明かすことができる(Silver, 1996).地震波の方位異方性に関する研究は数多く行われている. 一方, 異方性は鉛直方向のみに存在すると仮定した鉛直異方性に関する研究は, P波走時データを用いてWang & Zhao (2013)により東北地方と九州地方で行われた.
本研究では全マントルの鉛直異方性を考慮に入れたグローバルトモグラフィーを実施し, マントルダイナミクスの研究を試みた.
2.データ・手法
国際地震センター(ISC)のEHBカタログから山本・趙 (2010)によって選択された6765点の観測点で観測された12,657個の地震を解析に用いた.約140万個のP, pP, PP, PcPとPdiff波の走時データをインバージョンに使用した.
解析に用いた手法は, Wang & Zhao (2013)の鉛直異方性トモグラフィーの手法をZhao et al. (2013) によるグローバルトモグラフィーの手法に組み込んだものである. 三次元等方速度構造を表す格子点の間隔は2度(約220 km)であり, 三次元異方性構造を表す格子点の間隔は10度(約1100 km)である.
3.結果
鉛直異方性を考慮に入れたトモグラフィーを実施した結果, 等方成分のみを考慮したモデルに比べて最終的なroot-mean-square (RMS)走時残差は減少した. 上部マントルには環太平洋に低速度異常が, 安定大陸の下には著しい高速度異常が見られた. また, 南太平洋とアフリカの下には核―マントル境界(CMB) から地表まで連続した低速度異常が見られるなど等方成分については先行研究で行われた等方トモグラフィーの結果と非常に調和的であった. 異方性成分は, 太平洋スーパープルームなどでは鉛直方向の速度が水平方向より卓越している領域が見られ, マントル中の鉛直方向の運動を表していると考えられる.
参考文献
Kaminski & Ribe (2001) A kinematic model for recrystallization and texture development in olivine polycrystals. Earth Planet. Sci. Lett. 189, 253?267.
Silver (1996) Seismic anisotropy beneath the continents: Probing the depths of geology. Ann. Rev. Earth Planet. Sci. 24, 385?432.
Tommasi, Mainprice, Canova & Chastel (2000) Viscoplastic selfconsistent and equilibrium-based modeling of olivine lattice preferred orientations: Implications for the upper mantle seismic anisotropy. J. Geophys. Res. 105, 7893?7908.
Wang & Zhao (2013) P-wave tomography for 3-D radial and azimuthal anisotropy of Tohoku and Kyushu subduction zones. Geophys. J. Int. 193, 1161-1181.
山本芳裕, 趙大鵬 (2010), 全マントルP波トモグラフィー -Tohoku モデル-, 月刊地球, 32, 312-324.
Zhang & Karato (1995) Lattice preferred orientation of olivine aggregates deformed in simple shear. Nature 375, 774?777.
Zhao, D., Y. Yamamoto, T. Yanada (2013) Global mantle heterogeneity and its influence on teleseismic regional tomography. Gondwana Res. 23, 595-616.