日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-IT 地球内部科学・地球惑星テクトニクス

[S-IT40_1AM1] 地殻流体:その分布と変動現象への役割

2014年5月1日(木) 09:15 〜 10:45 416 (4F)

コンビーナ:*中村 美千彦(東北大学大学院理学研究科地学専攻地球惑星物質科学講座)、佐久間 博(東京工業大学大学院理工学研究科地球惑星科学専攻)、市來 雅啓(東北大学大学院理学研究科)、高橋 努(独立行政法人海洋研究開発機構 地球内部ダイナミクス領域)、座長:市來 雅啓(東北大学大学院理学研究科)、佐久間 博(物質・材料研究機構)

10:00 〜 10:15

[SIT40-04] 秋田県森吉山周辺の地震活動:流体の移動との関連

*小菅 正裕1 (1.弘前大学理工学研究科)

キーワード:東北地方太平洋沖地震, 誘発地震, 震源マイグレーション, 散乱, 地殻流体

2011年東北地方太平洋沖地震によって,各地で誘発地震が発生した.その中で,秋田県森吉山周辺での地震活動は,地殻流体との関係において興味深いと考えて研究を行って来た.我々は,震源位置の精度を高めるために,2012年9月から臨時地震観測を行っている.観測点は,最も活発な地震クラスターの直上付近に1点,その7 km程度北西の地点に9点から成るアレイ観測点を設置した.震源決定には,クラスター直上の1点と,アレイのうちの1点を用いた.これら臨時観測点のデータを加え,Double-difference法を用いて震源の再決定を行った.震源は顕著なマイグレーションを示し,そのパターンは複雑である.震源のマイグレーションを間隙流体圧の拡散によると解釈し,圧力源の位置と圧力増加が生じた時間,及び流体の拡散係数を,複数のマイグレーションに対して求めた.その結果,拡散係数として0.01?1.0 m2/sの値が推定された.この値は,先行研究において水の圧入による誘発地震や自然地震から推定した値と調和的である.観測された地震波では,S波の後に顕著な後続波が見られる.これをS-S散乱波と仮定して,back-projection法で散乱源の位置を推定をした.その結果,散乱源は森吉山の北西約5 km,深さ13 km付近に存在することがわかった.この深さは,森吉山付近の深部低周波地震の震源深さの上限にほぼ対応する.森吉山周辺での地震活動は,東北地方太平洋沖地震から約2か月経過してから開始した.地震波の散乱源を流体の貯留する場所と考え,ここからの流体圧の拡散が東北地方太平洋沖地震直後に始まり,2か月経過して地震発生層の下限に達して地震活動を開始したと考えると,拡散係数の値として0.2 m2/s程度が推定される.これは上記の推定の範囲内に収まる.このことも,森吉山周辺での地震活動が地殻流体にトリガーされていることを示唆する.