日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-IT 地球内部科学・地球惑星テクトニクス

[S-IT40_1AM2] 地殻流体:その分布と変動現象への役割

2014年5月1日(木) 11:00 〜 12:35 416 (4F)

コンビーナ:*中村 美千彦(東北大学大学院理学研究科地学専攻地球惑星物質科学講座)、佐久間 博(東京工業大学大学院理工学研究科地球惑星科学専攻)、市來 雅啓(東北大学大学院理学研究科)、高橋 努(独立行政法人海洋研究開発機構 地球内部ダイナミクス領域)、座長:中村 美千彦(東北大学大学院理学研究科地学専攻地球惑星物質科学講座)、宇野 正起(東北大学大学院環境科学研究科)

11:15 〜 11:30

[SIT40-08] マントル起源かんらん岩捕獲岩中の鉱物境界に発達する微細組織観察

*村田 雅美1植松 勝之2山本 貴史3谷 健一郎4宿野 浩司5水上 知行1森下 知晃1 (1.金沢大学大学院、2.マリン・ワーク・ジャパン、3.広島大学大学院、4.海洋研究開発機構、5.無所属)

キーワード:かんらん岩捕獲岩, 微細組織, 透過型電子顕微鏡, 結晶相境界, 流体

マントル物質中の結晶と結晶の境界(相境界)に,メルトや水に富む流体がどのように,どれだけ存在しているかは,メルトの発生や移動,マントルの物性・化学組成変動に直接的な影響を与えるため重要な情報である.実際に実験岩石学的,理論的アプローチは多い(例えばDrury, geophysical research letters, 1996,Hiraga et al., nature article, 2004)が,天然物質の観察例はほとんどない. 我々の研究グループでは,これまで知られていなかったマントル起源かんらん岩の結晶表面(相境界)のナノスケール微細組織に着目し,この組織が,固相―流体反応で相境界に形成された物質であると仮説をたて検証している.天然マントル物質を観察するためには,マントル起源の新鮮なかんらん岩と鉱物相境界を壊さないで観察する方法が必要である.かんらん岩捕獲岩は新鮮であるが,上昇時の体積増加のため鉱物相境界がはがれ,地表付近での低温低圧条件下で変質し,鉱物相境界の観察としては不十分である.そこで,新たな結晶表面観察・分析方法を確立し,天然かんらん岩試料に適用することが必要となっている.本発表では,世界的に最も著名なかんらん岩捕獲岩の産地である米国アリゾナ州サンカルロスのかんらん岩捕獲岩での観察結果について予察的結果を報告する.先行研究では,このサンカルロスのかんらん岩捕獲岩結晶相境界にアモルファス相が報告されている(Wirth, Contrib. Mineral. Petrol., 1996). 鉱物境界を観察するのには、一般的にTEMを用いた観察が主流であるが,できるだけ容易に多く観察したい.近年,電気を利用した鉱物分離装置(selFlag)が開発され,鉱物相境界を壊すことなく岩石を鉱物単位にばらばらにすることができるようになった.そこで,海洋開発研究機構のselFlag用いて鉱物境界にそってばらばらにし,高空間分解能電子顕微鏡(FE-SEM)で観察した. このかんらん岩捕獲岩の結晶表面の微細組織には多様性があり、以下のように分類した。 (1)μmスケールで確認される組織(虫食い状組織や網目状の組織,自形のような物質,エッチピット),(2) < μmスケールの高空間分解能で観察される組織. (1)>のμmスケールで確認される組織の上には,シート状の物質があり,その上に別の結晶が形成している場合もある.また, (1)の>μmスケールで観察される組織であっても,(2)の < μmスケール組織の集合体であるものも存在する.  現在,かんらん石結晶表面のEDS分析による化学組成の定性分析によって、表面を構成している物質の同定を行っている.かんらん石の(2) < μmスケール組織は,< μmスケール組織が確認されない部分と比較するとMgよりもSiが多く,Alが含まれている.このことは,エッチピットの内部と外部でも同様で,内部と比較し外部はMgよりもSiが多く,Alが含まれている.また,シート状の物質や,自形のような形状の物質にはCaとSが含まれ,さらにNaとClからなる結晶もあった.また,今後透過型電子顕微鏡により結晶表面形態を観察する予定である.これらの結果から,相の同定や,形成条件,形成プロセスを報告する.