18:15 〜 19:30
[SIT40-P08] シリケイトガラス中での水の拡散における速度論的同位体効果
キーワード:噴火ダイナミクス, ケイ酸塩ガラス, 水, 拡散, 水素同位体, 同位体効果
火道内を上昇するマグマ中で過飽和状態となった揮発性成分は,核形成を経て拡散によって,より大きな気泡へと成長する.これらの過程は揮発性成分の溶解度および拡散係数により支配されているため,メルト中の揮発性成分の挙動を理解することは,噴火メカニズムおよびダイナミクスを知る上で重要となる.
火道内での脱ガス過程は,気泡とメルト中に溶解した水との間で行われる同位体交換反応を通じ,水素同位体比に記録されていると考えられている.天然の岩石に含まれる水素同位体比は含水量と相関があり,含水量が低い程同位体比は小さくなり,その減少率は含水量の減少に伴い大きくなる.この傾向は閉鎖系脱ガスから開放系脱ガスへの推移を反映していると考えられるが,現在考えられている脱ガスモデルには,マグマ中の拡散の効果が考慮されていない.拡散による脱ガスは,マグマの上昇に伴う減圧脱ガスと同程度の影響を,脱ガスプロセス全体に与えている可能性があるため,より詳細な脱ガスモデルを組み立てる際には拡散の影響を考える必要がある.さらに,シリケイトメルト中の水の拡散では,H2OがHDOに比べ拡散しやすいことが考えられるため,速度論的同位体効果が起きていることが予想される.この影響は天然試料のD/Hにも記録されている可能性がある.しかし,シリケイトメルト中での水の拡散における水素同位体変化は未だ明らかになっていない.本研究では,水素の拡散による同位体分別係数を決定するために,シリカガラスと合成ライオライトガラスに対し,重水素の濃集させた水試料(H/D=10, 5, 1)を用いた拡散実験を行った.
実験はシリカガラスおよび合成ライオライトガラスを用い,石英管封入による実験(850℃,50 bar)と,東北大学の水熱装置を用いた実験(650℃,50・1000 bar)の二種類を行った.ガラスサンプルは,イオンマイクロプローブ(北海道大学のCameca ism-6f)でH,Dの濃度プロファイルを測定し,拡散係数の決定を行った.実験によって得られたH2O,HDOを含む水の拡散係数(水の濃度で割った値)は,650℃,850℃共に先行研究(Davis and Tomozawa, 1995; Berger and Tomozawa, 2003)と矛盾しないことが確かめられている.また,本研究ではシリカガラスについて,拡散に伴うD/H変化の測定を行った.その結果,D/Hが拡散に伴い一度減少し,その後プロファイルに沿って増加することが確認された.D/Hが下がる現象は拡散に伴う速度論的同位体効果が影響していることが考えられるが,その後の増加は拡散の同位体効果だけでは説明することができない.この現象は含水量変化に伴うIMF(Instrumental Mass fractionation)の変化によるものだと考えることができるため(Hauri et al., 2006),今後,水素同位体変化を正確に補正するため,IMFの値を決定することが必要である.
火道内での脱ガス過程は,気泡とメルト中に溶解した水との間で行われる同位体交換反応を通じ,水素同位体比に記録されていると考えられている.天然の岩石に含まれる水素同位体比は含水量と相関があり,含水量が低い程同位体比は小さくなり,その減少率は含水量の減少に伴い大きくなる.この傾向は閉鎖系脱ガスから開放系脱ガスへの推移を反映していると考えられるが,現在考えられている脱ガスモデルには,マグマ中の拡散の効果が考慮されていない.拡散による脱ガスは,マグマの上昇に伴う減圧脱ガスと同程度の影響を,脱ガスプロセス全体に与えている可能性があるため,より詳細な脱ガスモデルを組み立てる際には拡散の影響を考える必要がある.さらに,シリケイトメルト中の水の拡散では,H2OがHDOに比べ拡散しやすいことが考えられるため,速度論的同位体効果が起きていることが予想される.この影響は天然試料のD/Hにも記録されている可能性がある.しかし,シリケイトメルト中での水の拡散における水素同位体変化は未だ明らかになっていない.本研究では,水素の拡散による同位体分別係数を決定するために,シリカガラスと合成ライオライトガラスに対し,重水素の濃集させた水試料(H/D=10, 5, 1)を用いた拡散実験を行った.
実験はシリカガラスおよび合成ライオライトガラスを用い,石英管封入による実験(850℃,50 bar)と,東北大学の水熱装置を用いた実験(650℃,50・1000 bar)の二種類を行った.ガラスサンプルは,イオンマイクロプローブ(北海道大学のCameca ism-6f)でH,Dの濃度プロファイルを測定し,拡散係数の決定を行った.実験によって得られたH2O,HDOを含む水の拡散係数(水の濃度で割った値)は,650℃,850℃共に先行研究(Davis and Tomozawa, 1995; Berger and Tomozawa, 2003)と矛盾しないことが確かめられている.また,本研究ではシリカガラスについて,拡散に伴うD/H変化の測定を行った.その結果,D/Hが拡散に伴い一度減少し,その後プロファイルに沿って増加することが確認された.D/Hが下がる現象は拡散に伴う速度論的同位体効果が影響していることが考えられるが,その後の増加は拡散の同位体効果だけでは説明することができない.この現象は含水量変化に伴うIMF(Instrumental Mass fractionation)の変化によるものだと考えることができるため(Hauri et al., 2006),今後,水素同位体変化を正確に補正するため,IMFの値を決定することが必要である.