日本地球惑星科学連合2014年大会

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ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-IT 地球内部科学・地球惑星テクトニクス

[S-IT40_1PO1] 地殻流体:その分布と変動現象への役割

2014年5月1日(木) 18:15 〜 19:30 3階ポスター会場 (3F)

コンビーナ:*中村 美千彦(東北大学大学院理学研究科地学専攻地球惑星物質科学講座)、佐久間 博(東京工業大学大学院理工学研究科地球惑星科学専攻)、市來 雅啓(東北大学大学院理学研究科)、高橋 努(独立行政法人海洋研究開発機構 地球内部ダイナミクス領域)

18:15 〜 19:30

[SIT40-P09] 超高精度地質圧力計の開発

*高畑 幸平1鳥本 淳司2山本 順司2 (1.北海道大学大学院理学院自然史科学専攻地球惑星システム科学講座、2.北海道大学総合博物館)

キーワード:流体包有物, 二酸化炭素, ラマン分光法, マントル捕獲岩, 地質圧力計

マントル捕獲岩は,我々が手にする事が出来るマントル物質の一つである.マントル捕獲岩は由来深度が分からないため,この岩石を用いて地球深部の定量的な議論をするためには,地質圧力計を適用して由来深度を復元することが重要である.
 マントル捕獲岩にはスピネル-レルゾライトと呼ばれる,かんらん石,斜方輝石,単斜輝石,スピネルからなる種類の岩石がある.このスピネルを含む捕獲岩の由来深度は定性的におよそ25—90 kmといわれており,最上部マントルから来た岩石である事が推定される.よって,この岩石の由来深度が精密に計りとる事が出来れば,マントル最上部で起きている事象を定量的に議論する事が出来る.
 このマントル捕獲岩に従来から適用されてきた地質圧力計として,ざくろ石-斜方輝石圧力計とかんらん石-単斜輝石圧力計がある.しかし,前者はざくろ石の入っていない岩石には適用出来ず,後者は分析誤差や圧力計が持つ温度依存性の影響で圧力誤差が大きすぎる為,定量的な議論が出来ない.つまり,スピネル-レルゾライトを使って最上部マントルの議論をする為には,新たに高精度な地質圧力計を開発する必要がある.
 そこで,本研究ではCO2流体包有物の残存圧力を圧力指標とした地質圧力計に必要である,ラマン分光法を用いた高精度な密度測定を実現する為のラマン分光分析装置の開発と,その精度の決定を行った.開発に際して,分光器の焦点距離を伸ばし,波数分解能を向上させた新たなラマン分光分析装置を導入した.
 サンプルは,ラマンスペクトルの強度が出やすい石英中のCO2流体包有物を使用した.また,このサンプルの包有物中にCO2以外の不純物が含まれるか加熱ラマン分光法で確認した.
 測定の結果,新しい装置による密度測定誤差は,± 0.0025 g / cm3 (1σ)となった.この密度誤差は,圧力誤差にする際の輝石温度計の誤差に比べて非常に小さい為,この地質圧力計の誤差は,すなわち,輝石温度計に起因する誤差のみとなる.よって,この圧力計の深さ誤差は,大陸地殻のモホ面深度付近(30 km)で地質温度が1000 ± 30°Cと見積もられた場合で,± 900 mとなる.
 この精度があれば,最上部マントルで起きている様々な事象を地球物理的な手法よりも高解像度に議論する事が出来る.