日本地球惑星科学連合2014年大会

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口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-IT 地球内部科学・地球惑星テクトニクス

[S-IT41_28PM1] 海洋プレートの一生:誕生から解体,そして復活

2014年4月28日(月) 14:15 〜 16:00 314 (3F)

コンビーナ:*森下 知晃(金沢大学理工研究域自然システム学系)、山崎 俊嗣(東京大学大気海洋研究所)、島 伸和(神戸大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻)、安間 了(筑波大学生命環境系)、熊谷 英憲(独立行政法人海洋研究開発機構)、中村 大輔(岡山大学)、座長:道林 克禎(静岡大学理学部地球科学科)、仙田 量子(独立行政法人海洋研究開発機構地球内部ダイナミクス領域)

14:45 〜 15:15

[SIT41-12] 多結晶体の非弾性特性の実験的研究:上部マントル地震波構造の定量的解釈を目指して

*武井 康子1山内 初希1柄澤 史也2 (1.東京大学地震研究所、2.Yahoo, Japan)

キーワード:非弾性, 多結晶体

海洋プレートの地震波速度構造や減衰構造から、その温度構造、化学構造、メルト分布、粒径分布などの情報を取り出す際に必要となるのが、岩石の非弾性特性である。この非弾性特性には未知の部分が多いため、アセノスフェアの低速度の原因が温度か水かメルトかといった基本的な問いにも答えることができない。岩石試料の非弾性特性を調べるためには,1000℃以上の高温で、しかも地震波に相当するような低周波数(1-0.001 Hz)と歪み振幅(< 10-6)で弾性定数と減衰を測定する必要がある。このような実験は難しいため、温度や粒径依存性を系統的に調べたデータは、I. Jackson達のグループが発表した一連のデータがあるのみで、実験データの不足からスケーリング則やメカニズムの解明がなかなか進まない。私達は、データの不足を補うために,岩石のアナログ物質として有機物(ボルネオール)の多結晶体を用いた実験を行っている。岩石よりも融点の低いアナログ物質を使うことで、常温近傍で実験を行うことができ,弾性定数と減衰を約6桁に及ぶ広周波数帯域で精度良く測定できるため、個々の物質に依存しない多結晶体に普遍的な物理メカニズムの解明に有効である。  これまでの研究で、多結晶体の非弾性特性と粘性に密接な関係があることを明らかにし、マックスウエル周波数fmを用いた非弾性のスケーリング則, Q = Q(f/fm), を提案した(McCarthy, Takei, and Hiraga, 2011, JGR)。Priestley and McKenzie (2013, EPSL) は、この非弾性モデルを用いて、グローバルな横波速度構造から、海洋プレートおよび陸のプレートの温度構造、粘性構造、減衰構造を求めた。しかし、McCarthy et al (2011)のデータの規格化周波数は、マントルにおける地震波の規格化周波数(106 < f / fm < 109)に比べて有意に低いため、より高い規格化周波数帯域での実験データを取得して、このスケーリング則の地震波への適用可能性を調べることが重要な課題となった.  私達は,岩石アナログ物質の非弾性をより低温・高周波で測定し、規格化周波数の高い帯域でのデータを取得している。これまでの結果から、規格化周波数が104以上の帯域(地震波帯域を含む)での非弾性の振る舞いは、マックスウエル周波数fmによる単純なスケーリング則のみではとらえきれないことが分かった。特に、不純物による多結晶体の非弾性緩和の促進が、マックスウエルスケーリング則からの予想よりも(つまり、粘性への影響から予想されるよりも)はるかに大きいことが分かった.不純物には、多結晶体の融点を大きく低下させる働きがあるため、この実験結果は、多結晶体がその融点に近づいたことで非弾性緩和が促進されたとも解釈できる。上部マントルでは岩石が融点に近い温度にあり,このような場所での地震波速度構造の解釈には、融点近傍での多結晶体の非弾性特性を理解することが重要になると考えている。