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[SIT41-13] Seismic structural changes in the incoming oceanic plate beneath the well-developed horst and grabens
キーワード:海洋プレート, 海溝, アウターライズ, 折れ曲り断層, 含水, 海底地震計
近年の海溝周辺の各種構造研究の進展から、海洋プレートが海溝から沈み込む直前にプレート折れ曲り断層が発生する海域では、海洋プレート構造の変質が進んでいることが明らかになってきた。その変質は、折れ曲り断層の発達に伴う亀裂の増加と、水の浸透によるものと解釈されている。しかし、変質がどの深度まで到達しているのか、水の供給源や浸透メカニズムはどのようになっているかなど未解明な課題が数多く残っている。たとえば、水の供給源としては第一には海が考えられているが、折れ曲り断層が海底面には到達していない場所でも海洋地殻内の水量が増加しており、堆積層の底から堆積層基盤に生じた微小な亀裂を通して水が海洋地殻内に浸透している可能性も指摘されている。日本海溝域や千島海溝域は、プレート折れ曲り断層に伴いホルスト・グラーベン構造が世界でもっとも発達している海域の一つであり、沈み込む直前の海洋プレート構造の変質過程を研究するのに適した海域である。しかし、水深が大きくホルスト・グラーベンが観測される場所には従来型の海底地震計を設置できないため、これまではもっとも構造変質が進んでいると考えられる海溝軸周辺の調査が実施できていなかった。そこで、2013年夏、我々は大深度でも調査可能な海底地震計を用いて三陸沖で日本海溝を横切る構造調査を実施した。その結果、海溝軸周辺では海洋マントルまで構造変質が進んでいることを確認できた。さらに、これまでの調査では堆積層内を鉛直方向に伝播した波しか観測できていなかったが、グラーベンの中にも海底地震計を設置したことで、堆積層内を横方向に伝播したと解釈されるフェーズを観測することに成功し、堆積層内の滞水構造について新たな知見を得ることができた。その結果は、堆積層の下部が海洋地殻への水の供給源となり得ることを示唆するものである。