日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-IT 地球内部科学・地球惑星テクトニクス

[S-IT41_28PM2] 海洋プレートの一生:誕生から解体,そして復活

2014年4月28日(月) 16:15 〜 18:00 314 (3F)

コンビーナ:*森下 知晃(金沢大学理工研究域自然システム学系)、山崎 俊嗣(東京大学大気海洋研究所)、島 伸和(神戸大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻)、安間 了(筑波大学生命環境系)、熊谷 英憲(独立行政法人海洋研究開発機構)、中村 大輔(岡山大学)、座長:中村 大輔(岡山大学大学院自然科学研究科)、草野 有紀(金沢大学理工研究域自然システム学系)

17:45 〜 18:00

[SIT41-P05_PG] 台湾Lichiメランジに含まれるマフィック岩・超マフィック岩の岩石学

ポスター講演3分口頭発表枠

*小丸 千尋1森下 知晃1田村 明弘1荒井 章司1 (1.金沢大学大学院自然科学研究科)

台湾は世界でも有数の変動帯であり,フィリピン海プレートとユーラシアプレートが衝突する境界の上に位置している.台湾南東部では,オフィオライト状岩石群(火山岩,深成岩類)が泥質のメランジ(Lichiメランジ)の中にブロックとして含まれていることが知られている(Liou et al., 1977).これらのオフィオライト状岩石は,East Taiwan Ophioliteと定義される (Liou, 1977).East Taiwan Ophioliteの起源については,火山岩の地球化学的特徴,変成作用解析,テクトニクスモデルから,フィリピン海プレート起源とする見解 (Liou,1974), 火山弧であるルソン弧の北方延長起源 (丸山ほか,2011),南シナ海起源 (Suppe et al., 1981)などが提案されており,現在も議論がなされている.オフィオライトは,「陸上に露出する過去の海洋性リソスフェア(海洋地殻・マントル)の断面」(ペンローズ会議,1972)であり,通常では手に入らない地下深部の物質を研究する材料を我々に与えてくれる.しかしながら,台湾南東部のはんれい岩やかんらん岩などについて,詳細な研究はなされていない.台湾周辺のテクトニクス, およびオフィオライトの形成やメランジの形成プロセスを考える上でも,これらの岩石の起源を明らかにすることは重要である.そこで,本研究では,台湾南東部のLichiメランジ中に含まれているマフィック岩および超マフィック岩片について記載を行い,化学分析によって特徴を明らかにしたので報告する.
 本研究では,マフィック岩・超マフィック岩を選択的に採取した.その際,露頭において肉眼観察で鉱物の量比を判定し,採取する試料がなるべく多様になるように採取した.採取した試料のうち,超マフィック岩類の大半は蛇紋岩化していた.採取したはんれい岩類は,トロクトライト,かんらん石はんれい岩,ホルンブレンドはんれい岩,はんれい岩ノーライトに分類された.はんれい岩類では,黒色の不透明鉱物が多く見られた.採取したかんらん岩起源の蛇紋岩は,強い蛇紋岩化および変形を受けているものを除くと,ハルツバージャイトおよびダナイトに分類された.
 超マフィック岩類の大半は蛇紋岩化していたことから,初生的な組成を示す鉱物がスピネルのみである試料が多かったため,主にスピネルの化学分析を行った.かんらん岩起源の蛇紋岩中のスピネルにおいて,Cr#=0.3-0.6,Mg#=0.3-0.5という多様な値を示した.ルソン島において採取された島弧かんらん岩類中のスピネルは,Cr#=0.6-0.7のものが普遍的に見られるという報告がある(Arai et al., 2004).一方,本研究の試料は多様な試料を選択的に採取しているにも関わらず,Cr#>0.6のものが見られないことから,East Taiwan Ophioliteは中央海嶺かんらん岩が由来であると考えられる.