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[SMP46-06] 北海道神居古潭帯春志内ユニットに分布する砂質岩のジルコンFT年代とU-Pb年代
キーワード:神居古潭変成岩, ジルコン, U-Pb年代, フィッション・トラック年代, 変形微細構造
高圧型変成岩の上昇過程とメカニズムを議論するためには,その堆積から最大深度への沈み込み,上昇までの圧力-温度-時間履歴の正しい情報を得ることが必要である.我々は北海道神居古潭帯の春志内ユニットから砂質岩2試料を採取し,レーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析法(LA-ICPMS法)を用いて試料中の砕屑性ジルコンのフィッション・トラック(FT)年代とU-Pb年代を見積もった.その結果,concordant ジルコンU-Pb年代が1980-90 Maの間で広く変化することが明らかとなった.これらのうち最も若いU-Pb年代集団(約110-90 Ma)が優勢であり,その加重平均年代は両試料ともアルビアンの年代(100.8±1.1, 99.3±1.0 Ma, 2σ)を示した.分析されたジルコンは全く過成長によって形成されたリムのない火成起源のoscillatory zoningのみを示しているため,ジルコンU-Pb年代は高圧型変成作用によってリセットされていないことが示唆される.そのため,もっとも若いU-Pb年代年代は堆積年代の上限を示す.一方,ジルコンFTデータは100-90 Maの単一ピーク年代を持つスペクトラを示し,これはもっとも若いU-Pb年代集団と比較できる.この事実は,ジルコンFT年代が激しい火成活動によって約100 Maに一度リセットされたものの,堆積作用以降は基本的にリセットされていないことを意味する.この筋書きは,砂質岩を構成している変形した砕屑性石英粒子中の微細構造から見積もられた,石英の脆性塑性転移(約300 ℃,ジルコンFTの閉鎖温度)よりもわずかに低い温度条件によっても支持される.以前に報告された白雲母K-Ar年代と組み合わせると,春志内ユニットは100 Ma以降に堆積し,最大深度まで引きずり込まれた後,上昇時(約58 Ma)に局所的な熱イベントの影響を受けたことが推測される.