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[SMP46-P08] 四国における始新統および中新統中の結晶片岩礫の統合的な放射年代測定
キーワード:三波川帯, 結晶片岩, 放射年代測定
三波川変成帯が削剥レベルに達した年代,すなわち三波川変成岩礫を含む地層の年代は,礫そのものの放射年代とともに,三波川変成岩の上昇履歴を考察する上で重要な制約条件を与える.筆者らは,四国の古第三系と新第三系に含まれる三波川帯由来と考えられている結晶片岩礫を対象とし,その統合的な放射年代測定を実施してきた.その地層は,中新世(17Ma前後)であることが明らかにされている久万層群の基底部の古岩屋層と,始新世の渦鞭毛藻化石が報告されているひわだ峠層 (成田ほか,1999)である.さらに,山崎ほか (1995) により始新世の放散虫化石が報告されている,四国四万十帯大山岬層も対象とした.すでに,筆者らはひわだ峠層と古岩屋層の結晶片岩礫について,K-Ar年代およびフィッション・トラック年代(以下,FT年代)を報告した(高木・向坂,2012; 高木ほか, 2013).
そこで,今回新たにK-Ar年代およびFT年代測定に用いたひわだ峠層と古岩屋層の礫を対象として,東大大気海洋研のNanoSIMS 50を用いてジルコンのU-Pb年代を測定した.今回分析したジルコンは砕屑性ジルコンと考えられることから,最も若いジルコンのU-Pb年代は,結晶片岩の原岩の堆積年代に近似できる.未だ予察的段階であることから,最も若いピークの年代値を用いると, 3試料とも110 Ma 前後という結果となった.年代値の詳細は,発表時に報告する予定である.
大山岬層中の砂質片岩礫2試料から得られたジルコンのFT年代は,67.3 ± 9.0 Ma,68.4 ± 8.2 Maという値が得られた.今回得られた値は,吉倉ほか(1991)により報告されているフェンジャイトのK-Ar年代(78.2~71.4Ma)に比べ,やや若いものの誤差範囲で一致した.また,大山岬層中に白亜紀後期を示す放散虫の報告 (平ほか,1980) もあったが,ジルコンのFT年代を見る限り,古第三紀である可能性が高く,山崎ほか(1995) に示された放散虫年代と調和的である.
これらの結果(Table 1)より,ひわだ峠層と大山岬層中のフェンジャイトのK-Ar年代とジルコンのFT年代は誤差範囲で一致しているため,両者の年代差が明瞭な中新世久万層群中の礫に比べて,それらの上昇速度は速かったものと想定される.
文献
成田ほか,1999,地質雑,105,305-308.
平ほか,1980,四万十帯の地質学と古生物学,249-264.
高木・向坂,2012,日本地質学会第119年学術大会演旨,p.93
高木ほか,2013,日本地質学会第120年学術大会演旨,p.49.
山崎ほか,1995,愛媛大学教育学部紀要,15,31-36.
吉倉ほか,1991,日本地質学会第98年学術大会,p.434.
そこで,今回新たにK-Ar年代およびFT年代測定に用いたひわだ峠層と古岩屋層の礫を対象として,東大大気海洋研のNanoSIMS 50を用いてジルコンのU-Pb年代を測定した.今回分析したジルコンは砕屑性ジルコンと考えられることから,最も若いジルコンのU-Pb年代は,結晶片岩の原岩の堆積年代に近似できる.未だ予察的段階であることから,最も若いピークの年代値を用いると, 3試料とも110 Ma 前後という結果となった.年代値の詳細は,発表時に報告する予定である.
大山岬層中の砂質片岩礫2試料から得られたジルコンのFT年代は,67.3 ± 9.0 Ma,68.4 ± 8.2 Maという値が得られた.今回得られた値は,吉倉ほか(1991)により報告されているフェンジャイトのK-Ar年代(78.2~71.4Ma)に比べ,やや若いものの誤差範囲で一致した.また,大山岬層中に白亜紀後期を示す放散虫の報告 (平ほか,1980) もあったが,ジルコンのFT年代を見る限り,古第三紀である可能性が高く,山崎ほか(1995) に示された放散虫年代と調和的である.
これらの結果(Table 1)より,ひわだ峠層と大山岬層中のフェンジャイトのK-Ar年代とジルコンのFT年代は誤差範囲で一致しているため,両者の年代差が明瞭な中新世久万層群中の礫に比べて,それらの上昇速度は速かったものと想定される.
文献
成田ほか,1999,地質雑,105,305-308.
平ほか,1980,四万十帯の地質学と古生物学,249-264.
高木・向坂,2012,日本地質学会第119年学術大会演旨,p.93
高木ほか,2013,日本地質学会第120年学術大会演旨,p.49.
山崎ほか,1995,愛媛大学教育学部紀要,15,31-36.
吉倉ほか,1991,日本地質学会第98年学術大会,p.434.