日本地球惑星科学連合2014年大会

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セッション記号 S (固体地球科学) » S-MP 岩石学・鉱物学

[S-MP46_28PO1] 変形岩・変成岩とテクトニクス

2014年4月28日(月) 18:15 〜 19:30 3階ポスター会場 (3F)

コンビーナ:*河上 哲生(京都大学大学院理学研究科)、石井 和彦(大阪府立大学大学院理学系研究科物理科学専攻)

18:15 〜 19:30

[SMP46-P13] マダガスカル共和国中央東部マスラ岩体,アンタナナリボ岩体,ベツィミサラカ岩体に産する変成岩の年代学的特徴

*市來 孝志1石川 正弘1小山内 康人2中野 伸彦2足立 達朗2 (1.横浜国立大学 環境情報、2.九州大学 比較社会文化)

キーワード:ゴンドワナ超大陸, マダガスカル中央東部, LA-ICP-MS U-Pb ジルコン年代, EPMA モナズ石年代

マダガスカル共和国はゴンドワナ超大陸の復元図においてその中央部に位置する (e.g. Jacobs and Thomas, 2004).そのためゴンドワナ超大陸の形成プロセスを理解する上で重要な地域の一つである.しかしながら,マダガスカル共和国の位置するゴンドワナ超大陸中央部が,北部と同様に若い島弧地殻の衝突縫合によって形成したのか (Stern, 1994),あるいは古い大陸地殻の再変動を被ったのか議論の余地がある (e.g. Collins and Pisarevsky, 2005; Collins, 2006; Tucker et al., 2012).そこで本研究では,マダガスカル共和国中央東部を構成する地質体の年代学的特徴を明らかにするために,変成火成岩についてジルコンのLA-ICP-MS U-Pb法を用いて原岩の形成年代を推定し,変成堆積岩についてモナズ石のEPMA U-Th-Pb法を用いて変成年代を推定した.
 マダガスカル共和国中央東部は地質と年代に基づき,東からマスラ岩体,ベツィミサラカ岩体およびアンタナナリボ岩体に区分される (Collins, 2006; Tucker et al., 2011).マスラ岩体は主に珪長質変成岩から構成され,少量の変成堆積岩を含む.2種類の変成堆積岩中のモナズ石から約5.2-5.1億年前の年代が得られる.この年代はU-Pbジルコン法により変成花崗岩質岩から得られている約5.3-5.1億年前の変成年代 (Smith et al., 2008) と珪岩について得られている約5.4-5.2億年前の変成年代 (De Waele et al., 2011) とほぼ一致する.また珪長質変成岩は約33億年前の火成活動年代を示す.これはミグマタイト化した珪長質片麻岩からU-Pbジルコン法により得られている約33億年前の年代 (Tucker et al., 2011b) と一致する.
アンタナナリボ岩体は主に珪長質変成岩から構成され,少量の変成堆積岩を含む.アンタナナリボ岩体は変成温度圧力条件と地質構造により東部と西部に区分される.岩体東部は西部と変成度の勾配に沿って,低角の正断層センスを示す塑性剪断帯によって境される.岩体東部に産する変成堆積岩中のモナズ石からは約5.0-4.8億年前の年代が得られる.また西部に産する2種類の変成堆積岩中のモナズ石からは約5.4-5.0億年前 (Martelat et al., 2000)と約6.3-5.4億年前 (Jöns and Schenk, 2011) の変成年代が報告されており,また変成花崗岩中のモナズ石からは約5.6-5.4億年前 (Grégoire et al., 2009) の変成年代が報告されている.したがって,岩体東部の変成年代は西部よりもやや若い年代である.珪長質変成岩は地球化学的に2種類の異なる特徴を示す.岩体東部に産するものからは約27億年前の年代が,岩体西部に産するものからは約7.6億年前の火成活動年代を示すものが得られる.中性変成岩は岩体西部に産しており,U-Pbジルコン法に基づき約5.5億年前の火成活動年代を示す.
ベツィミサラカ岩体は主に変成堆積岩で構成される.変成堆積岩中のモナズ石から約5.0億年前の年代が得られる.これはU-Pbジルコン法に基づき珪岩より報告されている約5.5-5.2億年前の変成年代 (Tucker et al., 2011)と,変成堆積岩中のジルコン粒子のリムより報告されている約5.5億年前の変成年代 (Collins et al., 2003) よりも若い年代である.
これらの結果から,マダガスカル共和国中央東部は約5.5-5.0億年前に変成作用を被っている.その中でアンタナナリボ岩体東部とベツィミサラカ岩体はこれらの中で最も若い約5.0億年前の変成作用を被っている.またアンタナナリボ岩体ではこれまで最も古い火成活動年代は約25億年前と考えられてきた (e.g. Kröner et al., 2000).岩体東部にて見いだされた約27億年前の火成活動年代は同岩体中における新しい報告であり,報告されている中で最も古い火成活動年代である.これらのことからアンタナナリボ岩体東部は西部よりも古い年代を示す地域であり,さらにアンタナナリボ岩体の中でも特に古い地質体であると考えられる.したがって,マスラ岩体,ベツィミサラカ岩体とアンタナナリボ岩体西部との間に,年代の遷移する地質体が存在する可能性が高い.このような地質体の関係は,近年インド南部太古代クラトンにより報告されており (Peucat et al., 2013),太古代からのインドとマダガスカルの連続性を検討する上で重要な証拠となると考えられる.