日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-MP 岩石学・鉱物学

[S-MP47_1AM2] 鉱物の物理化学

2014年5月1日(木) 11:00 〜 12:45 422 (4F)

コンビーナ:*奥寺 浩樹(金沢大学理工学域自然システム学系)、興野 純(筑波大学大学院生命環境科学研究科地球進化科学専攻)、座長:奥地 拓生(岡山大学地球物質科学研究センター)、大藤 弘明(愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター)

11:15 〜 11:30

[SMP47-09] 微少量高圧相のPPMS装置による熱容量、エントロピーの測定:TiO2及びMnSiO3高圧相

*赤荻 正樹1小島 芽子1深井 安矢1糀谷 浩1 (1.学習院大・理)

キーワード:熱容量, エントロピー, 高圧相, PPMS装置

高圧鉱物の熱力学特性はその鉱物の基本的な物性量であり、その実測データは高圧高温下の安定関係を計算するために広く使われている。それらの実験データは、第一原理計算の結果を検討するためにも重要である。高圧鉱物の標準エントロピー(S298.15)は、極低温から室温までの温度範囲で測定された定圧熱容量(Cp)に基づき、Cp/Tを絶対零度から298.15Kまで積分することによって求められる。従来の低温熱容量測定には、断熱型熱量計を用いた方法が最も精度が高い実験法として使われてきた。しかしこの断熱法は数g以上の試料を必要とするため、高圧相試料については極めて限られた物質しか測定されて来なかった。最近開発された熱緩和法に基づく物理特性測定装置(PPMS)を使用した低温熱容量測定では、十数mgの高圧鉱物でも断熱型熱量計と同程度の精度で熱容量を測定できる。この方法では、液体ヘリウムで冷却し2Kから室温付近までの温度範囲で、試料を接着する台に取り付けられたヒーターによって試料に一定の熱的パルスを与え、試料温度の緩和過程を解析して、1~2K間隔でCpを測定する。筆者らは、東京工業大学阿竹・川路研究室との共同研究として、Mg2SiO4 wadsleyite、ringwoodite、MgSiO3 akimotoite、perovskite、SiO2 stishoviteなど低温熱容量をこの方法で測定し、これらのS298.15を決定してきた(Akaogi et al., 2007, 2008, 2011)。今回、学習院大学理学部に設置されたPPMS装置を用いて、TiO2及びMnSiO3の高圧相の低温熱容量測定を行い、それらのS298.15を決定した結果について報告する。 マルチアンビル装置を用い、rutile型TiO2の焼結体を3GPa、700℃で、α-PbO2型TiO2を8GPa、600℃で合成した。Cp測定に用いた試料は、10~21mgの焼結体(α-Al2O3は単結晶)である。またMnSiO3 garnetの焼結体を15GPa、1000℃で合成した。それぞれの円柱状焼結体試料の一面を研磨し、グリースでPPMS装置の試料台に接着し、Cp測定を行った。Cp測定の温度範囲は2~308Kであり、最初にα-Al2O3単結晶(NBS標準リファレンス物質720)のCp測定を行い、断熱型熱量計によるDitmars et al. (1982)の測定結果と良い一致を示すことを確認した。 今回測定されたrutile型TiO2のCpは断熱型熱量計による従来のデータと良く一致し、本研究によるS298.15は50.10J/molKであった。今回のα-PbO2型TiO2のCpを、今までに測定された2例(Yong et al. , 2014, Manon, 2008)と220~308Kの温度で比較すると、PPMSによるYong et al. (2014)の結果にほぼ一致し、DSCによるManon (2008)の結果とは大きく異なっていた。これは、この温度範囲でのPPMS測定の精度の高さを示していると考えられる。本研究によるα-PbO2型TiO2のS298.15は46.50J/molKであった。MnSiO3 garnetのCp測定データには、15Kに磁気転移と考えらえるピークが見られ、S298.15は90.92 J/molKであった。これらの測定結果を使って計算される高圧相平衡関係も合わせて報告する。