日本地球惑星科学連合2014年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-MP 岩石学・鉱物学

[S-MP47_1PM1] 鉱物の物理化学

2014年5月1日(木) 14:15 〜 16:00 422 (4F)

コンビーナ:*奥寺 浩樹(金沢大学理工学域自然システム学系)、興野 純(筑波大学大学院生命環境科学研究科地球進化科学専攻)、座長:奥寺 浩樹(金沢大学理工学域自然システム学系)、糀谷 浩(学習院大学理学部化学科)

15:15 〜 15:30

[SMP47-19] 彗星核モデルとしての合成アミノ酸ーシリカゲル複合体の衝撃圧縮

村井 拓朗1、*奥野 正幸2奥寺 浩樹2荒砂 茜1真下 茂3Chen Liliang3水上 知行2荒井 章司2 (1.金沢大学大学院自然科学研究科、2.金沢大学理工研究域自然システム学系、3.熊本大学パルスパワー科学研究所)

キーワード:彗星, アミノ酸, シリカゲル, 衝撃圧縮

数種のアミノ酸などの有機物が、彗星のコマを形成する粒子やマーチソン隕石などから、見つかっている[1, 2]。これらの報告は、初期地球上の原始生物を形成した基本物質が宇宙空間で形成され、彗星や隕石によって地球上にもたらされた可能性を示唆するものである。 Greenberg et al. (1997)[3]は、多くの彗星が有機物、珪酸塩物質ならびに氷で形成されていると報告している。他方、シリカゲルは非晶質のSiO4-n(OH)nの骨格を持ち水分子を含んでいる。それゆえ、シリカゲルは彗星の適当なモデル物質である。本研究では、彗星核中のアミノ酸(Lセリン)の衝撃圧縮に対する安定性を解明するために、合成Lセリンーシリカゲル複合体を衝撃圧縮し、回収した試料の構造変化をX線回折測定、赤外及びラマン分光法により調べた。衝撃圧縮実験は、8.2、10.9、19.7、26.9 GPaの条件で実施した。 ラマン分光分析の結果から、合成複合体は結晶性と水和性の2種類のLセリンを含んでいることが明らかにされた。衝撃サンプルのラマンスペクトルは、19.7 GPaの衝撃圧縮で結晶性のLセリンは消失し、水和性のLセリンが残ることを示している。それゆえ、19.7 GPaのサンプルはアミノ酸として水和性のLセリンのみを含んでいる。このことは、Lセリンの分子間の水素結合は水分子の存在の下で、分解されるものと考えられる。 この19.6 GPaの衝撃圧力は、Blank et al. (1999)によって推定されている、地球に衝突する19%の彗星の推定圧力と矛盾しない。このことは、原始地球上の生命原料物質が、宇宙空間で生成され、彗星等によって地球上にもたらされた可能性を指示する。引用文献[1] Elisila J.E., Glavin D.P., Doworkin J.P. (2009) Commetary glycine in samples returned by stardust. Meteoritics & Planetary Science 44, 1323-1330[2] Cronin J.R. and Pizzarello S. (1983) Amino acid in meteorites. Advances in space research 3, 5-18[3] Greenberg J.M., Aigen Li (1997) Silicate core-organic refractory mantle articles as interstellar dust and as aggregates in comets and stellar disks. Advance in space research 19, 981-990[4] Blank J.G., Millar G.H., Michael J.A., Winas R.E. (1999) Experimental shock chemistry of aqueous amino acid solution and comtary delivery of periodic compounds. Origin of Life and Evolution of the Biosphere 31, 15-51